アスリートにおいてオーバートレーニング症候群の発症は未然に防ぐことが重要であるが,一時的な疲労状態を評価するための有効な方法は確立されていない.そこで本研究では5日間のトレーニングを実施し,乳酸閾値強度の運動負荷によって起こる心拍変動の自律神経成分の応答から一時的なトレーニング疲労を評価できるかどうかを明らかにすることを目的とした.乳酸閾値強度の運動負荷を5分間行った後の疲労感・倦怠感は5日間のトレーニング前と比較してトレーニング後に有意に上昇した(p<0.05).さらに,運動負荷後の疲労感・倦怠感と運動負荷による自律神経成分の応答との関係性を検証したところ,運動負荷後の疲労感・倦怠感と運動負荷による自律神経成分(交感神経および副交感神経を反映する低周波成分)の反応量との間に有意な負の相関関係が認められた(r=-0.988, p=0.002[6日目]).したがって,運動負荷による自律神経成分の応答から一時的なトレーニング疲労を評価できることが示唆された.