暑熱下における簡便で実用的なクーリング方策を提案することを目的として,本研究では,透湿防水布を側地として,中綿に高吸収素材を用いた冷却ベストを作製し,衣服内温湿度および生理反応に及ぼす影響を検討した.冷却ベストの上にファン付きウェア (着衣TVA) を着用したとき,発汗量はほとんど確認されなかったが,皮膚温および衣服内温度が低下した.これらの結果は,高吸水素材から透湿防水布を通して水蒸気が放出し,ファンによって蒸発が促進されたことによるものであり,主観評価においても涼しくて快適であると評価された.一方,高吸水素材から発生した水蒸気のため,衣服内湿度は高くなったが,これによる湿潤感の低下はみられなかった.以上のことから,ファン付きウェアに冷却ベストを併用する方法は,汗に頼らない潜熱放散が可能となり,簡便で効率的なクーリング方策であることがわかった.