デサントスポーツ科学
Online ISSN : 2758-4429
Print ISSN : 0285-5739
研究論文
運動後のリカバリーにおけるアイシングの有効な適用方法の検討
山根 基大西 範和
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 42 巻 p. 204-213

詳細
抄録

本研究では,約10℃と比較的高い約20℃を保つよう試作した相転移型の定温材を用いて皮膚を冷却し,皮膚温の推移を観察することによりこれらの定温剤が目標とした温度を維持できるか否かを検討した.また,この定温剤の冷却効果が筋運動による熱産生の亢進や皮下脂肪の厚みなどの影響を受けるか否かについて検討することを目的とした.

 大学生27名 (男性15名,女性12名) に非利き腕 (運動負荷側) のみにダンベルを用いたアームカール運動を行わせ,運動後に両腕の上腕二頭筋上に定温材を装着し冷却を行った.運動を行わない利き腕を非運動負荷側とした.被験者は,運動後に,定温剤を用いて両腕の上腕部前面を20分間,約10℃で冷却する群 (10℃冷却群),約20℃で冷却する群 (20℃冷却群),及び対照として冷却を行わない群 (非冷却群) にランダムに分けた.運動後,両腕の上腕二頭筋上の皮膚温をサーミスタ温度計を用いて連続的に計測した.

 運動後の皮膚温測定開始から実験終了までの20分間において,10℃冷却群では約10℃~12℃ (運動負荷側の3点平均:11.0±0.1℃,非運動負荷側の3点平均:9.2±0.2℃) となり,20℃冷却群では約20℃~23℃ (運動負荷側の3点平均:22.2±0.1℃,非運動負荷側の3点平均:20.3±0.1℃) と一定の皮膚温に保たれていた.運動の有無,皮下脂肪の厚さによって定温材と密着している皮膚温は影響を受けたが,それぞれの定温材で実験中は一定の温度を維持でき,皮膚温の維持効果はあると考えられた.

著者関連情報
© 2022 公益財団法人 石本記念デサントスポーツ科学振興財団
前の記事 次の記事
feedback
Top