芸術工学会誌
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台湾原住民の集落移動と集住環境の空間構成原理に関する研究 : 魯凱族、排灣族、布農族、阿美族、卑南族、達悟族、賽夏族、鄒族、邵族、泰雅族集落を事例に
長野 真紀齊木 崇人
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2009 年 50 巻 p. 96-103

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抄録

本研究は、台湾の山間部に居住する10種族の台湾原住民を対象に、現地調査と日治時期の文献を通して集落移動と立地選定を明らかにし、持続と変容のプロセスを探究することを目的とする。台湾原住民に関する研究は1945年以降困難な状況にあり、そのため約半世紀外部に対して閉ざされてきたが1994年以降、原住民の認定に伴い現地での許可を得た調査が可能になった。固有の文化や習俗を持つ原住民は、現在までの台湾史の視点から見ても非常に重要な課題であると考えられる。新竹縣、苗栗縣、嘉義縣、南投縣、屏東縣、台東縣、花蓮縣に居住する原住民を研究対象に選定し、場所選定とその地理位置及び自然環境からみた特性把握調査として、10民族の概要と訪地した10集落の歴史、立地状況、集落規模、集落移動の時期について現地調査で得られた資料と文献により、その内容を明らかとした。また、日冶時期の台湾地形図と当時の写真から、現在の集落との比較を行い、更に文献から明らかとなった各集落の移動経緯から各族の集落立地の変遷を辿り、移動前・後の集落空間の変容を明らかにした。その結果、各集落の移動要因は災害(1集落)、災害と国民政府時期の還村計画(1集落)、日治時期の番社移住計画(4集落)、生業による焼畑(1集落)、不明(3集落)であることが分かった。対象集落の日治時期以降の集落移動は、災害と還村計画による1集落のみであり、その他の集落はほぼ定住化し、集落形態や規模、立地は約60年間変化することなく現在に至っている。また、原住民集落を立地環境と生業別に、(1)標高500〜1,200mの山腹斜面地・テラス・鞍部に立地する狩猟・採集型、(2)標高500m以下の山裾または平地に立地する農耕・畜産型、(3)標高100m以下の島嶼に立地する半漁半農型、(4)山裾の湖畔に立地する漁業型の4つに分類し、原住民集落を体系的に捉えた。そして、集落移動と立地環境から持続型、変容型、変容持続型、順応型、発展型、融合型の6つに分類し、各集落の環境構築要素を明らかにした。

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© 2009 芸術工学会
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