芸術工学会誌
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芸術工学会誌 82号
  • 20世紀の日本における主要工業製品色の変遷(3)
    伊藤 潤
    原稿種別: 論文
    2021 年 82 巻 p. 5-13
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/01
    ジャーナル フリー
     本稿は20世紀の日本における主要な工業製品の色の変遷についての一連の研究の第三報である。  洗濯機における“white goods” の受容過程を明らかにすることを目的とし,第二次世界大戦後の10 年間,1946(昭和21)年から1955(昭和30)年を対象期間とし,その間の洗濯機の製品色の変遷についてメーカー資料と各種文献を調査した。  まず戦後の進駐軍家族住宅(DH 住宅)向けの納入機の製品色について調査を行った。東京芝浦電気,國森製作所,神戸製鋼所の納入機は,戦前の芝浦マツダ工業の「ソーラーD型」を元にしたと考えられるが,過半数を占める國森製作所の納入機の製品色は白色であった可能性が高く,日立製作所の納入機も白色と推定された。また,従来DH 住宅への家電製品の納入は打ち切られたと表現されることが多かったが,少なくとも洗濯機に関してはGHQ からの当初の要求量より多く発注されたことを明らかにした。  続いてメーカー各社の製品について調査を行った。戦後最初期は洗濯機製造を行っていたのは東京芝浦電気のみであり,戦前と同じ機種名の撹拌式のものを製造していたが,その製品色は判明しなかった。その後,DH 住宅向け納入機納入の後,年間生産台数が2,000 台を超える1950(昭和25)年頃からメーカー各社も洗濯機を発売するようになり,撹拌式以外の形式を採用するメーカーも現れたが,いずれも製品色は白であった。各社の2号機ならびにその後に発売された洗濯機もほとんどが白色,あるいは白色と推定され,戦後10 年間で製品色が有彩色と確認できたのは東京芝浦電気の一機種のみであった。  戦前には白色と確認できた洗濯機がほとんど存在しないのに対し,戦後の洗濯機の製品色は一転して白色となった。既報では「連合軍住宅向けの納入品が民生用に転用されたことで日本に“white goods”が移植された」と結論付けたが,洗濯機での事例を見ると,DH住宅向け納入機は“white goods”的な概念をもたらし,DH住宅向け納入機を受注していないメーカーの製品色決定にも影響を及ぼしたと言える。
  • 丸の内仲通りの社会実験で見られた滞留行為の多様性
    三友 奈々
    原稿種別: 論文
    2021 年 82 巻 p. 14-21
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/01
    ジャーナル フリー
     本研究で扱う研究対象地は、東京都千代田区大丸有地区丸の内仲通りの車道上に設置された仮設の広場空間とする。本研究対象地は、そもそも車道として設計された空間上に仮設の広場空間を設えた先進的な事例である。またこの仮設の広場空間は単なる短期間の社会実験に止まらず、長期に渡って設置され続けているという点でも先進的な事例である。  本稿では定点観察調査によって、滞留行為をできる限り詳細に把握・分類し、各滞留行為の分析を通して、都市の中心部における広場空間について考察し、報告するものである。  都市の中心部の広場空間では、周辺の飲食店舗ではそぐわないと思われる行為として、すぐに同伴者と合流するために数分待つ行為、子供連れで頻繁に座ったり立ったりする行為、スマートフォンで通話をする行為、大量の荷物を置く行為等、多様な行為があることが分かった。また、平日の「食事」行為をはじめとした1人での単独利用が多く見られる行為、休日の「待つ」行為をはじめとした家族連れなどのグループに多く見られられる行為等、平日と休日で異なった多様な行為があることも明らかとなった。  都市の中心部の広場空間は、個々の滞留者が居心地良く過ごしながらも、滞留者同士が互いの滞留行為を制限しない場であることが望まれる。そのため、都市の中心部の広場空間には、屋外の開放性を活かし、それぞれの広場空間の滞留者や空間特性、都市の特徴を踏まえて、平日・休日、曜日毎の利用者や構成人数、1人組の単独利用から多人数利用、多世代の利用に対して、即時的に対応可能なフレキシブルなデザインが求められる。  また、都市の中心部の広場空間での滞留行為は屋外で様々な人の目に触れることから、他の滞留者の行為を誘発することがある。そこには国内外から様々な人々が集うため、デザイナーをはじめとした専門家が予め想定していない、さらに多様な滞留行為が将来的に生まれる可能性もある。そのため、都市の中心部の広場空間は、時代を超えて長期的に対応可能なフレキシブルなデザインであり続けることも重要である。
  • 中空立体造形制作における糊の比較実験
    加藤 千佳
    原稿種別: 論文
    2021 年 82 巻 p. 22-29
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/01
    ジャーナル フリー
     本研究は、ガラス素材の表現の幅を広げるための技法の開発を目的としている。現代の「工芸」とよばれる分野の評価基準は明確ではない。造形の自由によって、「用の美」だけでなく、「鑑賞の美」が評価される現代の「工芸」の中で、ガラス工芸の分野における、技法開発を行うことで、表現の幅を広げることができると考えている。本研究は、ガラス工芸の技法の中で、窯を使用し造形表現を行うキルンワークでガラスの中空立体形状を実現させるために糊の実験を行ったものである。  実験方法は、60mmの球体ガラスを88個制作し、その結果を考察した。糊は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、モデリンググラス(購入先ロペックスインターナショナル株式会社)、木工用ボンド/家庭用(小西株式会社)、重曹(レック株式会社)の4種類を使用した。分量によっても変化があると推測し、5段階もしくは6段階実験を行った。また、ガラスは焼成温度の違いでも、大きく変化がある。そのため、今回の実験では、フュージング技法の温度帯の中で低温度680℃、低温度と高温度の中間温度740℃、フュージング技法とキャスティング技法の中間温度800℃、キャスティング技法の温度860℃の4段階の温度帯で実験を行った。   実験の結果は、88個中43個において、生じた穴の面積が表面積が、1%未満に収まる中空立体形状が実現した。穴の総面積を10%まで許容すると62個実現した。成功率が高かった糊の種類は、カルボキシメチルセルロース(CMC)と木工用ボンドであった。木工用ボンドは、焼成糊の分量、温度関係なく成功個数が最も多く、表面積10%以上、37.5%未満、表面積が37.5%以上または形状が保たれていないものが0個であったことから、木工用ボンドが最も中空立体形状の成功率が高いことがいえる。また、結果からモデリンググラスと重曹は中空立体形状に適さない糊であることがわかった。この実験から、カルボキシメチルセルロース(CMC)と木工用ボンドを糊として使用することによって、中空立体形状は実現できるといえる結果となった。吹きガラスで作るような空気層を封印する空洞形状はできないもの、若干の穴を許せば、それに準じた立体形状を作ることは可能であることがこの実験でわかった。
  • ~なぜ上映作品は残されていないのか~
    脇山 真治
    原稿種別: 論文
    2021 年 82 巻 p. 30-37
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/01
    ジャーナル フリー
     展示映像とは見本市や博覧会等のイベント、博物館等の文化施設などに使われる映像の総称である。映画は世界共通の技術仕様があり、その限りでは後年のオリジナル上映も可能である。社会的評価も確立しており、研究対象としても多くの保存資料が活用されている。しかし展示映像には世界標準が存在せず、イベントで使われる一回性の映像という認識が強く、ほとんど保存されることはない。展示映像は映画とほぼ同じような歴史をもち、また同時代の展示手法や表現技術の最先端を擁していながらこれらがなぜ保存されていないのか。その理由を明らかにすることが本研究の目的である。さらに将来的には展示映像のアーカイブの実現へ向けた課題の抽出を遠望して本研究をスタートさせた。  展示映像は映画の発明の直後、1900年のパリ万国博覧会から登場している。映画が登場の当初から今日に至るまで国際的にアーカイブが進んでいるのと対照的に、展示映像はほとんど残されずにきた。それは展示映像が映像と音響だけでなく、スクリーンデザイン、上映空間の形状、特殊効果などのビジュアルデザインの総合として存在しており、そのすべての構成要素を何らかの方法で残さない限り、アーカイブとして完結しないという困難な対象でもある。本研究では日本万国博覧会(1970年:以降日本万博)、国際科学技術博覧会(1985年:以降つくば科学万博)、東京国際フォーラム等で制作された作品の追跡調査から、その理由を明らかにした。その着目点は上映システムが複雑であること、一つの作品の中に複数の素材・仕様が混在していること、保存のための推進組織がないこと、作品ごとに独自のシステムが計画されており標準化したアーカイブシステムが構築できないことなど、8つの側面である。  展示映像は同時代の最も先端的なコンテンツと技術を統合した作品だが、ことに「イベント映像」の側面が強いという特徴から、再演・再現は当初から前提にない。しかしながら、一方では、優れた作品が博覧会の期間を超えて保存され、擬似的な再演でも可能ならば、博覧会に参加できない多くの人々に、作品のコンセプトやメッセージを継続的に配信することができ、何よりも将来の展示映像の研究者、制作者にとって有益な資料となると思われる。
  • Yimin Wang, Peng Jiang, Takamitsu Tanaka
    2021 年 82 巻 p. 38-45
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/01
    ジャーナル フリー
    In order to avoid an inefficient assembly/disassembly process and wasteful use of materials, it is important to improve the disassembly efficiency of products. In this paper, it is proposed that the choice of shape and labeling of parts may improve disassembly efficiency. In order to verify this assumption, a set of cube puzzles was used for disassembly process experiments. Three experiments were conducted with a total of 56 participants who disassembled seven different types of cube puzzles. The authors compared the average time taken and number of errors committed by participants while disassembling different cubes. The results showed that when participants disassembled a cube puzzle that could be opened via multiple parts, the average number of errors was not different, even though these cube puzzles took more time to disassemble.Thus, puzzle shape had no positive effect on disassembly efficiency. However, when participants disassembled a cube puzzle with only one key clue part that was labeled, it had a positive effect on disassembly efficiency, that is, labeling the first shape to be moved made the disassembly process more efficient.
  • 信用金庫の橋渡しにより製品化が実現した良寛コーヒーのパッケージ
    倉知 徹, 黒木 宏一
    原稿種別: 論文
    2021 年 82 巻 p. 46-53
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/01
    ジャーナル フリー
     2018年度に産学金連携として株式会社良寛と新潟工科大学、柏崎信用金庫の三者が連携し、株式会社良寛の商品「良寛コーヒー」200mlパックのパッケージデザインをリニューアルし、2019年7月に一般販売を開始した。本稿では、この産学金連携によるパッケージデザイン・リニューアルの取り組みを題材に、一般販売にこぎつけたプロセスと連携した三者それぞれが得た成果を明らかにした。そして、本取り組みの意義を2点考察した。  パッケージデザイン・リニューアルの取り組みプロセスでは、産学金の三者連携の体制構築(第Ⅰ期)、大学での課題出題と作品提出(第Ⅱ期)、提出作品から1作品(グランプリ作品)への審査会での絞り込み(第Ⅲ期)、グランプリ作品の実際のパッケージへ再構成(第Ⅳ期)、新パッケージでの製品製造と販売(第Ⅴ期)の5段階がある。特に、第Ⅱ期で座学系講義の課題として出題し履修者131名が作品を提出したこと、第Ⅲ期で東京・表参道を会場に学生プレゼンテーション含む公開審査会を実施したこと、第Ⅲ期で食品流通を専門とするバイヤー、第Ⅳ期でプロダクトデザインを専門とするデザイナーに専門家として参画してもらい、取り組みプロセスの質を向上させたことが特徴となっている。  また、産学金の三者連携によるそれぞれにとっての成果と意義を示した。株式会社良寛にとっては5点、新潟工科大学にとっては3点、柏崎信用金庫にとっては3点の成果が得られた。パッケージデザインがリニューアルしただけに留まらない大きな成果と変化を、各者にもたらした。  産学金連携によるパッケージデザイン・リニューアルの取り組みの意義は2つ挙げられる。座学系講義を通して学生がパッケージデザインに関わり、連携した三者以外にも専門家が関わり一般販売までこぎつけられた点(産学金連携による完遂)と、実際の製品のデザインと絞り込みの審査会、製造現場の見学に学生が関われた点(実践的教育の提供)である。  本稿から、連携各者の成果と取り組みの意義を明らかにした。今後はこのような連携の取り組みが継続的に実践することが求められる。
  • 購買数上位ストーリーマンガ作品群を対象として
    谷岡 曜子
    原稿種別: 論文
    2021 年 82 巻 p. 54-61
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/01
    ジャーナル フリー
     本研究では、ストーリーマンガのコマの数に関して、技法書やインターネット上で語られる通説から4つの仮説を抽出した。仮説ⅰ.コマ数の最頻値は5~7コマ、仮説ⅱ.最初のページのコマ数は全体のコマ数平均よりも少ない、仮説ⅲ.最後のページのコマ数は全体のコマ数平均よりも少ない、仮説ⅳ.全体を通してコマ数を変動させ緩急をつける。  これらの仮説の検証のためのサンプル群は、販売数統計サイト「オリコン」より、2017年2~7月期のマンガ販売数上位20作品、計120作品のうち、4コママンガ作品と重複を除く74作品の1話目とした。  仮説ⅰ~ⅳの検証の結果、ⅰ.1ページあたりの平均コマ数は4.99となり、従来の通説よりもコマ数が少ないという結果になった。1ページあたりのコマ数は時代の影響を受けやすく、仮説より少ない結果となったのはスマートフォンやタブレットなど、コミックスよりも小さなサイズの画面で鑑賞する読者の増加によると考えられる。ⅱ.最初のページのコマ数は平均よりも少なく、3.9コマであった。従来の仮説の理由となっていた、冒頭に印象的な絵や情報を配置するために大きくコマを取ることが、コマ数が減った原因であろうと考えられる。ⅲ.最後のページのコマ数は最初のページのコマ数よりも少なく、3.2コマとなった。最後のページには余韻を残す、または次回への誘引が求められるため、その影響を受けていると考えられる。ⅳ.全体を通してコマ数を変動させ緩急をつけるべきであるという仮説の検証のため、1作品を等分に4分割し、頭から区間①~④とし、区間の比較によって1話の大まかなコマ数の変化を調査した。その結果、ページあたりの平均コマ数を比較すると、区間②を頂点とした山型のグラフができた。  しかしながらコマ数が少なくなるという結果の出た区間①は、物語の重要な情報が集中する区間であり、コマ数は増えるように思われる。こうした結果になった原因は、読者への情報の提示に、わかりやすさが優先された結果であり、コマ数は情報と演出の両方から影響を受けていることがわかる。  検証の結果、仮説ⅱ~ⅳは正しい。仮説ⅰに関しては、実際には仮説よりもコマの数が少ないという結果となった。
  • 馬 健, 井上 朝雄
    原稿種別: 論文
    2021 年 82 巻 p. 62-69
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/01
    ジャーナル フリー
     本研究は、美術館の展示室において、展示品の適切な展示に重要な意義を持つ年間積算照度の視点から、年間昼光照明シミュレーションによるケーススタディを通じ、採光手法とガラス仕様の選択が展示室の光環境の形成に与える影響を定量解析することを試みたものである。  シミュレーション方法はRadianceに基づくガラス仕様も考慮できる年間動的シミュレーション(Three-phase method)を用いた。ケーススタディの対象をトップライトとサイドライトを含めた8つの代表的な事例とした。シミュレーションの結果を通じ、年間積算照度の空間的な分布の特徴を定量的・視覚的に把握することができ、国際照明委員会(CIE)の推奨値(絵画:600klx・h、彫刻:特になし)と比較しながら、各ケースの展示状況に合わせて光環境を考察した。採光手法による年間積算照度分布の特徴について、多様なパターンは見られたが、鋸形のトップライトを用いたケース、線形のトップライトを用いたケースや四面の壁にハイサイドライトを用いたケースは、主要な展示面の照度分布は比較的に均斉であり、遮光装置等が一切使用されなくても展示品が配置された位置の年間積算照度も推奨値に近いため、今後の美術館の展示室における自然光利用に十分な可能性を示した。  また、ガラス仕様の選択による年間積算照度への影響について、ガラスの厚さ、空気層、種類やフィルムの4つの面からシミュレーションと考察を行った。その結果、ガラスの厚さが増すにつれて、年間積算照度はやや低下する傾向が読み取れた。空気層の変化は結果に対する明らかな影響が見られなかった。ガラスの種類の選択について、各種類の間に無視できない差が示された。可視光透過率が異なるフィルムの使用によって年間積算照度が大幅に変化する傾向が読み取れた。以上より、ガラスの厚さ、種類やフィルム等の仕様の選択による展示室の年間積算照度のコントロールに対する効果が定量的に検証された。
  • 池田 果衣, 清須美 匡洋
    原稿種別: 論文
    2021 年 82 巻 p. 70-77
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/01
    ジャーナル フリー
     エンプロイヤー・ブランド(Employer Brand=以下、EBと記す)とは、企業の従業員や求職者向けのブランドイメージの構成方法であり、製品づくりに関する一貫性をアピールするProduct Brand(=以下、PBと記す)や、顧客向けの企業イメージを戦略的に構築するCorporate Brand(=以下、CBと記す)と並んで、企業にとって重要なイメージ構築の考え方である。PBやCBは、企業の外向きの一貫性のあるイメージを確立する方法として早くから注目されてきたが、企業の内向きの情報も重要であるとするEBが注目されるようになってきたのは最近になってからである。  本研究では、企業がEBを導入し、確立しやすくすることを目的とし、EBの概念をわかりやすく構造化し、企業が体系的に導入できるようにする方法を提示する。  本研究は、3×3ブランドマトリクスを提案した。提案の方法は下記の流れで行った。①ブランド構成要素の抽出で、ブランドを成立させる構成要素を抽出、階層化する際に、ブランドとブランドが示す対象にとどまらず、ブランドを受信する生活者の解釈をブランドの構成要素に含めた。②パースの記号論に基づくブランド構成要素の階層化で、パースの記号論における、記号そのもの、記号が示す対象、解釈志向の三項構造を応用し、ブランドを成立させる構成要素を3×3のマトリクスに階層化した。③CB、PB、EBの構成要素で重視される要素の比較で、PB、CB、EBの区別が明確ではないため、3×3ブランド構成要素分析法=3×3ブランドマトリクスを使い、各ブランド構成要素の中で重視される要素の関係をアンケート調査により明らかにし、PB、EB、CBで重視される要素でPB3×3表、EB3×3表、CB3×3表を作った。④一企業を例とした3×3ブランドマトリクスによるブランド分析可能性の検討で、個別ブランドの具体的事例を3×3ブランドマトリクスとEB3×3表にあてはめることで、個別ブランドの分析が可能であることを検証した。  本分析手法の研究により、3×3ブランドマトリクスとEB3×3表が個別企業ブランドの体系的な解釈に役立つことがわかった。
  • 金子 晋也
    原稿種別: 論文
    2021 年 82 巻 p. 78-85
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/01
    ジャーナル フリー
     函館は、洋風建築や和洋折衷の町家などによる異国情緒ある町並みが特徴としてとらえられてきた地域である。これに対し、本研究は、市内に多くみられる1棟の建物を2戸に分割した住居形式(一棟二戸)の変容に着目し、その形態的特徴とバリエーションを明らかにすることで、庶民の生活の場から函館の地域性を評価する視点を得ることを目的とするものである。  一棟二戸は、昭和9年の函館の大火の復興計画以降に小規模な土地所有者により建設された住居形式であり、旧市街地の西部や郊外の住宅地である東部に広くみられる。建設された立地によっても形態が異なることから、本研究では歴史的、地理的に多様性が把握できる地区として青柳町と宝来町を対象としている。研究対象は、現地での外観観察調査を通じて確認した連続住宅116棟から、過去の住宅地図と照合し、現在も一棟二戸であることが確認でき、生活の形跡のある63棟を対象事例として抽出した。分析では、一棟二戸の伝統的な構成や要素に対する形態的差異に着目し、屋根形からみたボリュームの形態的特徴(4章)と、出入口と開口部廻りの差異からみた外観の特徴(5章)により分類した。さらに、ボリュームと外観の分類の組合せから一棟二戸のパターンを整理し、対象地区における分布を把握した(6章)。  分析の結果、63棟の形態的特徴は、寄棟屋根や切妻屋根の伝統型(38事例:60%)と変形屋根や陸屋根など非伝統型(25事例:40%)に分類され、非伝統型では出入口や開口部廻りに差異がある割合が高いことが明らかとなった(18/25事例:72%)。また、類似するパターンが局所的に集まるエリアが確認でき、庶民の生活の場が多様に展開する様子が把握できた。さらに、計画的に配された幅広の直線状の街路との関係から、アドホックな乱雑さと整然さが対比する都市のイメージが把握できた。  本研究でみた分類指標は、函館市内の他地区に現存する一棟二戸にも共通する形態的特徴であり、今後は減築事例や複数戸の連続住宅と合わせて整理することで、函館の住文化の地域的・通時的特徴が整理できると思われる。また、本研究で得た一棟二戸のパターンは、函館の都市のイメージを考察する上での知見を提示したといえる。
  • 新潟工科大学におけるパッケージデザイン演習を事例にして
    黒木 宏一, 倉知 徹
    原稿種別: 報告
    2021 年 82 巻 p. 86-93
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/01
    ジャーナル フリー
     ICTの実践や研究は各分野で盛んに行われているものの、ICTを活用したデザイン教育という視点に立った研究は、黎明期の段階にある。本稿は、筆者が取り組んだ、ICTを活用した工学系デザイン教育の実践を事例に挙げ、デザインの質を高めるためのICTを活用した教育方法を検討、教育効果を検証したものである。  本稿では、1節でデザイン教育とICTの活用に関する研究の方向性、2節で研究の方法、3節で、デザイン授業の問題点とICT環境の工夫について、4節で、段階的にデザインスキルを高める演習課題(課題①トレース、課題②名刺のデザイン、課題③パッケージデザイン)の3段回の課題設定の狙いについて、5節で、教育に活用したICT環境(e-portfolioとタブレットアプリ)の効果について、6節で、この授業で制作された作品の類型化、優秀な作品の課題①から課題③までのデザインスキルの変化と教育方法の関連性、7節で、デザイン教育とICT環境の効果の構造について論述している。  段階的なデザインスキル向上の課題設定については、課題①では、学生に取り組みやすい身近なもののトレースを行うことで、DTPソフトの特殊な操作の体得を促し、課題②では、名刺のデザインにおいて、紙面全体のレイアウトに関する技術の体得、課題③のパッケージデザインにおいて、デザインワークにおける基本的な流れ、デザインリサーチ、構想、スケッチ、デザインとして落とし込む、と言った一連の体得を目指した。ICT環境の整備については、70人規模の受講する学生のきめ細やかな作品チェック方法や、講評の手法、学生相互の作品確認など、学生の全体的なデザインスキルアップのためのICT活用のポイントをまとめている。また、多様な発想・着想のデザインが生まれていること、デザインスキルの変化として、デザインスキルの高い学生はもとより、スキルの低い学生でも段階的に技術を伸ばしている。ICT環境を活用したデザイン教育の枠組み、次のステップに向かわせるループとその要点にも言及している。  結論として、デザイン教育において、特に受講者数の多い授業に関して、ICT環境を活用した教育が有効であること、また、学生作品のきめ細かな把握、学生相互の学びの機会の獲得、学生の主体性やモチベーションを高める効果があった。
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