芸術工学会誌
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ポップアップ多面体の幼児用知育遊具への活用 : デザイン検討モデルによる操作実験
織田 芳人
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2009 年 51 巻 p. 111-118

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抄録

本論文は、1回の操作で立体化・折り畳みが完了する動き、すなわちポップアップ、の可能な多面体を、幼児用知育遊具へ活用することを目的として、そのためのデザイン検討モデルを制作し、幼児による操作実験及び保護者へのアンケート調査によって、遊具としての適否及び知育性の有無を考察するものである。開くと中から形が立体的に飛び出すような仕掛けを組み込んだ絵本は、1回の操作で立体化・折り畳みが完了する。折り畳み式の椅子やテーブルも多くは1回の操作で立体化・折り畳みが完了する。そうした絵本や家具などにおける立体化・折り畳みの操作には、ある種の面白さ、すなわち形体の変化・動きに対する単純な驚きと快感が伴っている。一方、近年になって、幼児期における教育が、『教育振興基本計画』に見られるように、国策として重要視され始めてきた。そこで本研究では、上記のポップアップ多面体を幼児用知育遊具として活用することを目的とした。具体的には、幼児が手に取って形体の変化・動きを体験できるような小型の知育遊具と、幼児が内部に入って空間感を体験できるような開口部を設けた省収納スペースの大型知育遊具である。本論文においては、まず、正多角形面で構成される中空の凸多面体を対象として、ポップアップ多面体の試作・検討を行い、それら多面体を「半折図」で示した。次に、ポップアップ多面体グループに属する正四面体、正六面体、正八面体の3種類を用いて小型及び大型のデザイン検討モデルを制作し、それらについて、幼児による操作実験及び保護者へのアンケート調査を行った。以上、ポップアップ多面体の試作・検討と、デザイン検討モデルによる操作実験及びアンケート調査から、(1)正多角形面で構成される中空の凸多面体の中で、ポップアップ多面体として15種類が確認された、(2)自主的操作の点で、小型及び大型検討モデルは幼児用遊具として通用すると考えられる、(3)ただし正六面体と正八面体の大型検討モデルは、幼児が自力で操作できるように軽量化を図る必要がある、(4)図形や形体の認知を促す点で、小型及び大型検討モデルには知育性があると考えられる、(5)保護者の視点から、小型及び大型検討モデルは幼児に受け入れられることが十分期待される、という結果が得られた。

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© 2009 芸術工学会
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