芸術工学会誌
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ニューアーバニズム理論の実践手法としてみたSmartCodeの特性と課題に関する研究(建築・環境デザイン)
佐々木 宏幸齊木 崇人
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2010 年 53 巻 p. 80-87

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抄録

SmartCodeは、ニューアーバニズム理論(New Urbanism、以下NU理論)を実践するために米国で開発された、従来のゾーニング規定に代わる新たな開発規定であり、自治体が独自の開発規定を策定する際に利用することができるモデル開発規定である。本研究の目的はNU理論の実践手法としてみたSmartCodeの特性と課題を探究することである。本研究ではまず、SmartCodeが実践を目指すNU理論の特徴を、NU理論を明文化した文書であるNU憲章をもとに確認した。次にSmartCodeの内容と特性をSmartCodeとその関連文書を基に明らかにした。さらに、NU憲章の基本原則とSmartCodeの条項の比較考察を行った。最後に、以上の結果と考察をもとに、NU理論の実践手法としてみたSmartCodeの特性と課題を論考した。本研究を通しSmartCodeの以下の特性が明らかになった。(1)SmartCodeを利用して策定され、自治体により施行される開発規定は、法令としての位置づけを与えられる。(2)SmartCodeは、自然、田園から都市までの居住空間を6分割した空間の基本単位としてのトランセクト(Transect)を用い、田園や都市などの多様な居住空間のあり方を明示している。(3)SmartCodeは、トランセクト・コミュニティ・区域・地域の空間のヒエラルキーを導入し、地域的スケールでの空間の体系づけに成功している。(4)SmartCodeは、NU憲章が掲げる空間に関する地域、近隣から街区・建物に至るスケールの基本原則の実現に貢献し得る。以上の論考から、空間的枠組みの構築に焦点をあてているSmartCodeは、NU理論の空間以外の側面には直接対応していないことが判明し、策定段階における社会、経済、コミュニティ・マネイジメントなどに関する施策との連携手法の確立が、SmartCodeの今後の課題であることを明らかにした。

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