芸術工学会誌
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Print ISSN : 1342-3061
芸術工学会誌72号
伝統土壁構法の検証
「団子積み」と「練り土積み」構法の実践と施工特性に関する研究
畑中 久美子木村 博昭村本 真加藤 亜矢子
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2016 年 72 巻 p. 113-120

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抄録

本論文では、「団子積み」と「練り土積み」と呼ぶ古来から日本にある、湿った土を積み上げる土壁構法に焦点を当てる。本論文の目的は、建築における土壁構法の選択肢を増やす事や、2つの構法の活用可能性を広げることを最終目標と捉え、その第一歩として、今後の建築のための記録を残すことと、2つの構法の違いおよび、版築や2つの構法に類似する土を積み上げる土壁構法に対する位置付けを明確にすることである。「団子積み」と「練り土積み」の施工特性を把握するため、以下の方法で研究を進めた。 1)「団子積み」と「練り土積み」構法の定義 2)「団子積み」と「練り土積み」の検証実験  2つの構法のいずれか、もしくは両方を用いた3つの建築や工作物によるプロジェクトの検証実験について、計画と概要、材料、道具、施工の要領をまとめ、工程、施工日数、人数等を比較、考察する。 3)1)〜2)を総合して、「団子積み」と「練り土積み」を用いた土壁構法の施工特性をまとめる。3つのプロジェクトと使用構法は下記のとおりである。 1.「公園灰屋」における「団子積み」 2.「藁葺き泥小屋」における「練り土積み」 3.「かまど」における「団子積み」と「練り土積み」の混合  検証実験の結果 「団子積み」と「練り土積み」の施工特性をまとめると、①施工速度が「団子積み」より「練り土積み」の方が速かったこと。②土に混ぜる水の量の目安が、「団子積み」の方が「練り土積み」より多かったこと、③土を練る際の藁は、「団子積み」では加え、「練り土積み」は加えなかったこと。などが挙げられた。本研究をとおして明らかになったことは、①「団子積み」「練り土積み」共、建物平面に曲面が多用されている場合は、型枠コストと、造形のしやすさの面で、型枠を必要とする版築よりも優位である。②「団子積み」より、「練り土積み」の方が施工速度が速く、乾燥期間も短いため、総工期を短かくすることができる。③ 1 日の壁の施工可能高さは「団子積み」「練り土積み」共600㎜程度である。さらに、版築や、2つの構法に類似する湿った土を積み上げる土壁構法に対する関係性を図示した。

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