抄録
外国語教育において,AI 翻訳のもつ読み上げ機能(自動合成音声)ならびに音声認識機能は,リスニングや発音練習など音声教育への応用可能性を有しており,英語教育分野ではすでに実用化に向けた研究が多数行われている.本稿では,自動合成音声による読み上げ機能に注目し,日本の大学のドイツ語教育において活用する際の方法や問題点を考察する.具体的には,課題テクストをAI 翻訳に入力し読み上げたものをネイティヴ教員による音声リスニング教材の代わりや学生の発音の手本として活用することを提案する.ただし,自動合成音声は現状では序数を正確に読み上げられないなどの弱点をもつため,対策を講じる必要がある.AI 翻訳は学生にとって手軽に使えるツールであるので,翻訳以外の機能もうまく学習に活用できるよう指導することは教育上有益である.AI 翻訳は変化が速い分野であるから,教員も技術の発展やアプリの変化に目を向けながら教育方法を考えていく必要がある.