抄録
本事例はサイエンティフィック・ゲームジャムに参加した博士課程学生が体験した、心理的変化のプロセスに関する発表である。サイエンティフィック・ゲームジャムは博士課程学生の科学的研究を題材にしたビデオゲームを48 時間で制作することを目的としたハッカソンであり、博士課程学生である第一著者と、第二〜第七著者が同じチームに属しゲームを共同開発した。本研究では、第一著者が第八著者に対して行った語りを通して、みずから体験の振り返りを行ない、心境の変化を分析した。その結果、「自身の研究分野に関する専門知識を持ちつつ、ゲーム制作にそこまで習熟していない博士課程の参加者が、ゲームジャムを通して科学コミュニケーションやゲーム開発技術に関する多くの新しい知見を得る。また、技術面や時間の制約から満足のいくクオリティに仕上げることができないことに葛藤を感じつつも、各々の専門分野を生かしてゲーム制作に取り組むこと自体に楽しさを見出す」という叙述化が行われた。