道南医学会ジャーナル
Online ISSN : 2433-667X
若年者の大腿骨転子部骨折術後偽関節の一例
中川 裕一朗佐藤 攻冨山 陽平水島 衣美押切 勉奴賀 賢小堺 豊北村 公一山下 敏彦
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2022 年 5 巻 1 号 p. 62-67

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抄録

【はじめに】大腿骨転子部骨折術後の偽関節率は0.8-2%程度と報告されている。今回我々は大腿骨転子部骨折術後偽関節で再手術が必要な症例を経験したので文献的考察を加えて報告する。 【症例】64歳男性。腎機能低下、糖尿病の既往あり。自動車運転中に中央分離帯に衝突し受傷した。当院に救急搬送され右大腿骨転子部骨折、右膝蓋骨骨折の診断となった。第4病日に意識障害を認め糖尿病性ケトアシドーシス、腎不全の診断となり集中治療室管理となった。血糖が安定し第17病日に髄内釘による骨接合術を施行された。術後2週免荷ののち荷重歩行訓練を開始し、独歩可能になるまで回復し術後4ヶ月で自宅退院となった。術後7ヶ月より誘因なく右股部痛が出現し徐々に歩行困難となったため当院再診。右大腿骨転子部骨折偽関節の診断となり、術後9ヶ月で髄内釘入れ替え、腸骨移植を施行した。術翌日より部分荷重訓練を開始した。術後6週の時点で独歩可能となっている。 【考察】大腿骨転子部骨折の骨癒合阻害因子として諸家の報告では整復位不良、不安定骨折、内固定材料の設置不良が挙げられた。本症例では安定型骨折であり整復位や髄内釘の設置が良好であった。64歳と比較的若年であり活動性が高いこと、糖尿病、腎機能低下、手術待機時間が影響したことが骨癒合遷延に影響したと考えられる。 【結語】大腿骨転子部骨折の治療に際し骨折型や整復位のみならず合併症などの患者背景にも十分に注意すべきである。

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