道南医学会ジャーナル
Online ISSN : 2433-667X
登校困難を主訴に受診し2q37微小欠失症候群と診断した1例
清水 直政八ツ賀 秀一八ツ賀 千穂鈴木 雅彦櫻井 恭平立石 格
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2023 年 6 巻 1 号 p. 34-38

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抄録

【はじめに】2q37微小欠失症候群は、精神発達遅滞、第3-5指の中手骨短縮、筋緊張低下、自閉症スペクトラム障害などを呈する稀な染色体異常である。今回我々は、登校困難を主訴に受診し、短指症の指摘から診断に至った13歳女児を経験したので報告する。【病歴】38週、3,100gで出生。乳児健診で異常を指摘されたことはないが、母は筋力が弱めであると感じていた。小学6年生時に倦怠感や食思不振を認め、総合病院を受診した。肘関節が柔らかいことを指摘され、家族全員に対しEhlers-Danlos症候群の遺伝子検査をされたが診断には至らなかった。中学2年生時にめまい、動悸のため登校困難となり、近医クリニックを受診、起立性調節障害と診断をされ投薬により症状はやや改善したが、登校困難が依然持続したため、当院小児科児童精神専門外来受診となった。【現症・検査】身長:149.4cm(-1.08SD)、体重:39.9kg、顔貌異常あり(細く高い眉毛、突出した鼻尖、薄い上口唇)、両側第3-4指趾の短縮あり、二次性徴:年齢相当、血液検査:Hb 13.8g/dL、 Ca 9.4mg/dL、P 4.8mg/dL、ALP(IFCC) 259IU/L、TSH 1.110μIU/mL、free-T4 1.26ng/dL、単純X線写真:第3-4中手骨・中足骨短縮、知能検査(WISC-Ⅳ):FSIQ=73 【診断】第3-4指趾中節骨の短縮と軽度の知的障害を認め、Turner症候群、偽性副甲状腺機能低下症、2q37微小欠失症候群を念頭に置き、鑑別診断を進めた。G分染法を施行したところ、2q37欠失が確認された。【まとめ】家族が心因性の要因を疑い受診に至ったが、短指趾症の鑑別診断を同時に進めることで2q37微小欠失症候群と診断できた。心身症的主訴の受診でも、外表奇形を含め、全身の身体診察が重要である。特に骨の異常所見は比較的疾患特異的なものもあり、鑑別疾患を絞り込むうえで非常に有用なことがある。

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