道南医学会ジャーナル
Online ISSN : 2433-667X
回復期リハビリテーション病棟における脊椎圧迫骨折患者の転帰先の判断のためのFunctional Independence Measureのカットオフ値の検討
木村 優斗佐藤 嶺村上 正和三浦 一志
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2023 年 6 巻 1 号 p. 43-46

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抄録
【はじめに】脊椎圧迫骨折(vertebra compression fracture:以下、VCF)は骨粗鬆症に起因する椎体の圧迫骨折であり、治療は外固定による保存療法が一般的である。コルセットが完成するまではベッド上安静が推奨されるためADLや歩行が制限される。また、コルセット完成後も疼痛が残存し動作が制限されることでADLの評価が行えず、予後予測に難渋し、転帰先を決める時期が遅れることがある。そこで本研究では、回復期リハビリテーション病棟(以下、回リハ病棟)に入院したVCF患者の転帰先を予測し得る時期及び自宅退院可能なカットオフ値について、FIMを用いて明らかにすることを目的とした。【方法】対象は当院回リハ病棟に入院したVCF患者のうち、在院日数が8週間以上であった71名(男性:16名、女性:55名、平均年齢:79.2歳)とした。調査項目は転帰先と、入院時から8週目までのFIM運動項目(以下、mFIM)を1週ごとに合計8回採点した。統計解析は、転帰先を従属変数、1週ごとのmFIMをそれぞれ独立変数とした単回帰分析を実施した。その後、有意な回帰式が作成された週のmFIMから、自宅退院の可否を判断するカットオフ値をROC曲線にて算出した。有意水準は5%とした。【結果】自宅群が40名、非自宅群が31名であった。単回帰分析では1週目〜8週目の8つ全てのmFIMで有意な回帰式が作成された。ROC曲線においても8つ全てのmFIMで有意なカットオフ値が算出された。入院1週~5週のmFIMのカットオフ値は43.5~47.5点であり、6週~8週のmFIMは55.5~58.5点であった。【考察】本研究の結果入院1週目~8週目の全ての時期において、mFIMを用いた転帰先の判別が可能であった。また、mFIMのカットオフは6週目以降に急激な上昇が起こるという特徴が明らかとなった。入院直後から一定のADLの自立度で経過し、かつ入院6週以降には多くのADLの自立度が向上することが自宅に退院するためには重要である可能性が示唆された。各ADL項目の詳細な経過について今後検討したい。
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