抄録
抜去後15分から6ヵ月までの総計130本のヒト抜去歯を用い,抜去後の経過時間と保存液の違いが,コンポジットレジンと象牙質との接着性に与える影響を,引っ張り試験とSEMとにより検討した。さらに接着強さを改善するための処理剤として10%クエン酸-3% FeCl3溶液の有用性をも同様に検討した。
その結果,生理食塩水に保存したものでは抜去後15分に接着させた場合が最も低く,13kg/cm2を示し,24時間以内ではその挙動が不安定で,1週以後12週までは35kg/cm2前後で安定した。そして,6ヵ月間10%ホルマリンに保存した抜去歯では,80kg/cm2と高い接着強さを示した。また,抜去後15分と1ヵ月に,処理剤で象牙質処理を行うと,各々生理食塩水で保存した場合に比べ,約3倍の接着強さの向上を見た。SEM所見では,接着強さがある程度低い部分では,レジンタッグと接着強さとの相関がかなり認められたが,接着強さが高くなる場合は,レジンタッグと共に管間象牙質に対しても,より強い結合が生じているものと思われた。