薬物動態
Print ISSN : 0916-1139
H2 受容体拮抗薬,塩酸ロキサチジンアセタートの体内動態(第9報): 雄性ラットにおける単回静脈内投与後の血中濃度推移,分布および排泄
植田 薫落合 浩之川辺 勝弘本間 誠次郎塚本 國雄
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1995 年 10 巻 6 号 p. 743-765

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抄録

[14C]TZU10mg/kg をラットに静脈内投与し,生体内分布,尿,糞および胆汁中排泄,さらに血中推移について総放射能および主代謝物の両面から詳細に検討し,以下の結論を得た.
1.主代謝物であるM-1,M-2およびM-3の定量に LC/MS-SIM を用いることにより,従来の GC/MS 等による測定に比べ,3化合物の定量を精度よく短時間に,かつ同時に行うことが可能となった.
2.血液中総放射能および血漿中M-1濃度はいずれも2相性に減少し,α相のT1/2はそれぞれ 0.38,0.17時間,β相で3.82,0.77時間であった.血漿中M-2およびM-3濃度の T1/2 はそれぞれ 1.36,0.91時間であった.
3.[14C]TZUの体内分布では,肝臓,腎臓のような代謝および排泄組織,胃および小腸のような作用組織,あるいは耳下腺,顎下腺などの分泌組織において総放射能が高いが,ほとんどの組織においてその消失は速やかであり,72時間後までに投与量の 0.1%以下あるいは検出限界以下となった.
4.主要組織の radio-HPLC 分析パターンより,投与15分後では,肝臓を除く4種の組織(脳,胃,小腸および腎臓)で,放射能がM-1,M-3,M-2画分の順で高く,それらの合計は総放射能の大半を占めていた.よってこれら3種が TZU の主代謝物であり,時間の経過に伴い酸化的代謝あるいは抱合を受けて極性の高い画分へ移行することが判明した.
5.主要7組織について,ラット尿中における3種の主代謝物(M-1,M-2およびM-3)濃度を LC/MS-SIM により定量した結果,3代謝物ともに,精巣を除くすべての組織で T1/2 が 3.4時間以下と速やかな消失を示した.
6.精巣での総放射能の T1/2 は 10.5時間と比較的長く,これはM-2およびM-3に基づくものと判明した.
7.TZU の薬効の標的組織である胃および小腸では,薬理活性を有する代謝物であるM-1が最も高濃度であり,すぐれた H2拮抗薬としての特徴が認められた.
8.肝臓においてはM-3の濃度が非常に高いことから,酸化的脱アルキル化でフェノール体(M-3)が,主として肝臓で生成することが確認された.
9.投与48時間後までに投与した放射能の約87%が尿中に,約8%が糞中にそれぞれ排泄された.尿中の主代謝物はM-3であり,その約半分は抱合体であった.糞中ではこれら3代謝物の排泄比率は投与量の 0.3% とほぼ同等であった.
10.胆痩ラットでは投与後48時間までに投与した放射能の 20% が胆汁に排泄された.M-1,M-2画分の放射能はいずれも投与量の0.3%であるのに対し,M-3画分は約8%と最も高く,そのほとんどが抱合体であった.

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