抄録
14C標識(−)-(2 S,3 R)-2-amino-3-hydroxy-3-(3,4-dihydroxyphenyl) propionic acid (L-DOPS)をマウス,ラット,イヌおよびアカゲザルに経口あるいは静脈内投与し,このときの吸収・分布・排泄について検討した.以下,その結果の要約を示す.
1) 14C-L-DOPS (10mg/kg)経口投与後の血清中14C濃度はマウス,アカゲザルでは投与後30minまでに,ラット,イヌでは投与1hr後に最高値(Cmax)を示した.Cmaxはイヌ9.5μg eq/ml,アカゲザル4.4μg eq/ml,マウス3.6μg eq/ml,ラット2.7μg eq/mlであった.その後血清中14C濃度は速やかに低下し,T1/2はイヌ1.3hr,アカゲザル2.3hr,マウス2.2hr,ラット4.2hrであった.
2) 14C-L-DOPSを10,100または1000mg/kgの用量で雄ラットに経口投与した場合,血清中14C濃度は,投与後1hrまでにCmaxを示し,その後低下した.これらの血清中14C濃度の推移から算出した血清中14C濃度対時間曲線下面積(AUC0-48)は投与量に相関した増加を示した.
3) 14C-L-DOPSを雌ラットに経口投与(10mg/kg)した場合,血清中14C濃度は投与後30minに最高値を示し,以後T1/2 4.0hrで低下し,血清中14C濃度の推移に性差は認められなかった.
4) 14C-L-DOPSを各種実験動物に経口投与(10mg/kg)した場合,放射能は速やかに吸収され体内に分布した.大半の組織の14C濃度は,血清中14C濃度と同時間に最高に達し,その後速やかに低下し,24hr後には0.6μg eq/g以下となり,特定の組織への残存は認められなかった.マウスおよびラットでの全身オートラジオグラフィーによる体内14C分布パターンは,組織摘出法の結果と同様であった.
5) 各種実験動物とも14Cの移行が高かったのは,腎臓・肝蔵であり,マウス・ラットでは膵臓にも高い移行性が示された.一方,脳・脊髄への14Cの移行は低かった.
6) 14C-L-DOPSを各種実験動物に経口投与(10mg/kg)した場合,投与後72hrまでに投与量の60~72%が尿中に9~20%が糞中に排泄された.ラットでは投与量の約14%が呼気中に排泄された.ラットでの胆汁中14C排泄率は48hrまでに2.8%と低く,14C-L-DOPSは消化管から吸収された後,大部分は尿および呼気中に排泄されることが知られた.