薬物動態
Print ISSN : 0916-1139
老齢ラットにおける新規三環系抗うつ剤,quinupramineの生体内動態
横山 信治坂本 博彦西本 敬史大幡 勝也村井 和征辰巳 煕
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1991 年 6 巻 3 号 p. 291-308

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抄録

老齢(1および2年齢)および若齢(8週齢)のラットに14C-quinupramineを経口投与し,加齢に伴う生体内動態の変化について検討した.
1.8週齢ラットでは経口投与後1時間で最高血中濃度(放射能)に達したが,老齢ラットでは最高血中濃度に達する時間が遅くなった.血中からの放射能の消失は,いずれの動物もほぼ同様の半減期(Tα1/2=0.87~1.66hr,Tβ1/2=19.2~25.1hr)であったが,老齢ラットの最高血中濃度およびAUCは若齢ラットよりそれぞれ2.8および2.7倍高い値を示した.
2. 14C-quinupramine経口投与後2時間における2年齢ラットの組織中の放射能は若齢ラットの1.6~10.3倍の濃度を示した.投与後24時間では,両老間の濃度差はより大きくなった.しかしながら,2年齢ラットの組織内放射能の分布様式は,若齢ラットとほぼ同様であった.これらの結果は,全身オートラジオグラフィの成績とほぼ一致していた.
3.In vitroにおける14C-quinupramineの血漿蛋白との結合率は,若齢,2年齢ともに80%以上であった.2年齢ラットに14C-quinupramineを経口投与した後,2時間の血漿蛋白結合率は46.5%であったが,若齢ラットでは投与後1時間で58.5%を示した.
4.肝ミクロソームの薬物代謝酵素活性(アミノピリン脱メチル化およびアニリン水酸化)およびチトクロームP450は加齢に伴い低下した.In vitroでのラット肝ミクロソームによる14C-quinupramineの代謝実験で,2年齢ラットでは未変化体の割合が48.2%であったが,若齢ラットでは8.4%であった.14C-quinupramineを経口投与したラットの尿,糞,血漿,心臓肝臓および腎臓における未変化体の存在割合は,In vitroの試験結果と同様,2年齢ラットの方が若齢より高い値であった.
5.経口投与後24時間までの尿と糞を介しての放射能の排泄は,若齢ラットで92.4%,老齢ラットで66.5%(1年齢)および51.5%(2年齢)であった.投与後168時間までの累積尿中排泄は,若齢ラットで27.5%,老齢ラットで28.1%(1年齢)および37.2%(2年齢)であった.

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