抄録
関節炎を惹起したイヌにおいて,IMFの鎮痛作用とその体内動態を検討し,INDの場合と比較した.
炎症性疹痛の抑制作用は投与量に応じて増加しており,IMFでは3mg/kgから,INDでは0.3mg/kgで明確に認められた.この結果に基づいて14C-IMF10mg/kgおよび14C-IND3mg/kg経口投与時の体内動態を検討した.
14C-IMFおよび14C-IND投与後の血液中放射能濃度のTmax,Cmax.およびAUC(0~6時間)は,TmaxがIMFに比しINDの方が速い以外は両者ともほぼ同等であった.
14C-IMF投与3時間および6時間後における炎症部位の滑膜組織および滑液中放射能濃度は,いずれも正常部位の濃度に比べ約2倍高かった.炎症部位での放射能は,主に未変化体IMFおよびINDとして存在し,未変化体IMFはINDより高濃度で存在した.また,炎症部位での放射能,未変化体IMFおよびIND濃度は,いずれも投与6時間後では3時間後より増加した.14C-IND投与および6時間後における炎症部位での放射能濃度およびIND濃度は,いずれも正常部位のそれと近似し,その濃度はIMF投与時と同等もしくはそれ以下であった.また,放射能濃度およびIND濃度とも,投与後3時間に比べ6時間では同等もしくは減少した.In vitro試験において,IMFの加水分解活性は肝臓で最も高く,次いで腎臓で高かった.血漿中に活性は認められなかったが,炎症部位から得た滑液中に加水分解活性が認められた.
以上の試験成績より,炎症を惹起したイヌにおいてIMFは鎮痛作用を示すことが確認された.また,IMFは炎症部位へ未変化体として移行し,炎症部位でINDを遊離するという特徴を有するプロドラッグであることが示唆された.イヌにおけるIMFの血中動態はヒトに近似することから,今回得られたイヌでの成績は,ヒトでのIMFの体内動態を類推し得るものと思われた.