抄録
ラットに14C標識酒石酸ゾルピデムを3.29mg/kg,1日1回最高28日間反復経口投与し,放射能の吸収,分布,代謝および排泄を検討した.
1.ラットに1,7,14,21および28回投与時の血液中放射能濃度から求めたAUC0-24はそれぞれ1.74,1.35,1.92,1.73,2.14μg eq.hr/mlであった.14回投与以降のAUC間に有意差が認められなかったことから,反復投与14回以降血液中放射能濃度は定常状態に達したものと考えられた.反復投与にともない血液中放射能の消失半減期は遅延する傾向にあった.しかし,14および28回投与後のAUC0-24は,1回投与時の1.1および1.2倍に相当し,その増加はわずかであった.
2.ラットに14,21,28回投与後24時間の血漿中放射能濃度はそれぞれ16,15,18ng eq/mlとほぼ一定であった.血漿中濃度より高濃度に分布した血液,肺,肝臓,腎臓,皮膚を含む多くの組織で,14または21回投与以降の組織内放射能濃度はほぼ一定であり,組織中濃度も定常状態に達したものと考えられた.
3.ラットに28日間反復投与後の組織中放射能濃度のうち,腎臓,脾臓および皮膚からの放射能の消失は他の組織に比べて遅い傾向が認められた.しかし,投与後72時間には投与後5分値の7%以下,70日後にはすべての組織で検出限界以下となった.
4.ラットに28回反復投与後30分の血漿中には未変化体の他,M-I,M-III+M-IVが認められ,M-II,M-Vは検出限界以下であった.尿,糞中に未変化体は認められず,主代謝物M-Iが試料中放射能のそれぞれ57.4,59.0%認められ,M-II~M-VはM-Iの1/10以下であった.28回投与後の代謝物の割合は単回投与時とほとんど差がなかった.
5.ラットに反復投与した際,尿および糞中への放射能排泄率はほぼ一定であり,28回投与後120時間までの尿中には累積投与量の21.6%,糞中には79.0%が排泄された.