日本歯周病学会会誌
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症例報告
1 型糖尿病を有する慢性歯周炎患者の 12 年経過症例
伊藤 小百合
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2012 年 54 巻 1 号 p. 71-80

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抄録
12 年間歯周治療を行い,現在サポーティブペリオドンタルセラピー(SPT)を行なっている 1 型糖尿病を有する慢性歯周炎患者の症例について報告する。歯周組織状態の評価は主に残存歯すべてを 6 点法で計測した臨床的アタッチメントレベルの平均値(平均 CAL)により行った。患者は 56 才の女性で,主訴はブラッシング時の出血と前歯部の歯石と象牙質知覚過敏(Hys)であった。患者は歯周基本治療に良好な反応を示し,すべての歯周ポケットは 3 mm 以下となり,Hys も改善された。左側臼歯部の咬合を回復させるため,27 を 36 の位置に移植し,ブリッジを作成した。しかし,SPT 期間中に約 2 年間の中断があり,プラークコントロールが困難であった移植歯では付着の喪失が起こった。患者は今でも度々低血糖発作を起こし,HbA1c は 8.2%である。不十分な血糖のコントロールにもかかわらず,患者の平均 CAL は 12 年間で 0.2 mm 減少し,付着の獲得が観察された。1型糖尿病を有する慢性歯周病患者では,継続的な SPT と厳密なプラークコントロールが必要であることが示唆された。日本歯周病学会会誌 (日歯周誌) 54(1):71−80,2012
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© 2012 特定非営利活動法人 日本歯周病学会
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