抄録
[14C]フィナステリドを雌雄ラットに経口あるいは静脈内投与したのちの吸収,分布および排泄について検討した.また,フィナステリド投与後の未変化体の血漿中濃度についてもHPLCを用いて測定した.
1.[14C]フィナステリドは経口投与後,雌雄ラットにおいて速やかに吸収され,それぞれ2および1時間でCmax(1.38および1.23μg/mJ)に達したのち,雄では2相性を示し1.4および20時間のT1/2で,雌では2.2時間のT1/2で消失した.静脈内投与では,雌雄ラットでCm脳(2.20および2.54μg/ml)が1および0.5時間にそれぞれ認められ,分布容積の小さい代謝物の生成が示唆された.T1/2は雌雄ラットで類似しており,1.3時間(雄)および1.8時間(雌)であった.[14C]フィナステリドの経口吸収性は良好で,雌雄ラヅトで100および81%であった.また,非標識体投与実験より得られた経ロバイオアベイラビリティは類似(雄で62%,雌で59%)していたが,AUCは雌で約2倍大きく,T1/2も雌で長かった.
2.フィナステリドの大部分は小腸より速やかに吸収されるものと考えられた.
3.経口投与後の組織内放射能濃度の最高値は,ほとんどの組織で投与後1時間以内と血漿中濃度のピーク時(0.5時間)と類似し,胃,肝臓および副腎に特に高濃度に分布した.投与後24時間では,血漿中濃度と同等かあるいはそれ以上であったが,その後いずれも減少し,投与後72時間では最高濃度の11%以下であった.また,静脈内投与においても同様の分布を示し,さらに,全身オートラジオグラムからも上記結果を裏付ける分布が得られた.
4.[14C]フィナステリドの主要排泄経路は投与経路によらず,雌雄ラットとも胆汁を介するもので,投与後48時間以内に94%以上が胆汁中に排泄され,雄において約1/3が腸肝循環していた.