2024 年 34 巻 p. 248-253
本稿は,2016 年度に施行された私立大学の定員管理厳格化政策が,志願者の大学進学にどのような影響をもたらした可能性があったのかを考察する。まず,教育経済学的視点から,当該政策と類似した性質を持つと考えられる海外の高等教育政策として,米国の大学選抜におけるアファーマティブアクションの廃止を取り上げ,両者の政策の類似点について論じる。次に,アファーマティブアクションの廃止がマイノリティ志願者に与えた影響に関する実証研究をもとに,定員管理厳格化政策が都市部に比べ地方部の志願者に対してアンダーマッチングのリスクをより高め,地方と都市部の経済格差の拡大のリスク要因を高めていた可能性を指摘する。