2018 年 27 巻 1 号 p. 40-43
8カ月齢,雑種犬の腹腔鏡下卵巣摘出術中に,腹腔内に寄生する2隻の線虫を発見し,摘出した。術後に実施した血液検査で犬糸状虫抗原は陽性であったが,末梢血中のミクロフィラリアは陰性であった。心エコー検査では心奇形は認められず,心臓内にも虫体は検出されず,当該犬に寄生した虫体は,腹腔から検出された2隻だけと考えられた。この2隻は,犬糸状虫の雌未成熟虫体(性成熟には達していない5期虫体)と雄成虫と思われた。そこで雄成虫の頭部および尾部の構造を精査したところ,特に尾部の乳頭の配列から,これを犬糸状虫と同定した。また,雌未成熟虫体を出発材料に解読した遺伝子配列は,雄成虫に由来するものと相互に一致し,過去の報告の配列とも一致した。以上の結果から,検出虫体はいずれも犬糸状虫と同定した。