2021 年 30 巻 1 号 p. 6-9
健常犬7頭を対象に一般的に使用される界面活性剤および保湿剤が皮膚に与える影響を繰り返し・オープン試験で検討した。異なるシャンプーによる皮膚への障害は経皮水分蒸散量(TEWL)および皮表角層水分量の2種の皮膚バリア機能を測定することで評価を行った。界面活性剤の皮膚への影響はその分子量が影響するため一般に配合されている界面活性剤で低分子のラウレス硫酸ナトリウム(SLS)と高分子のラウリン酸ポリグリセリル-10を比較した。また,保湿剤(ポリクオタニウム-10)を添加して皮膚障害が緩和されるか比較を行った。繰り返し・オープン試験でSLS群が温水浴のみの群よりTEWLが有意に上昇した。保湿剤の添加および高分子量の界面活性剤を用いた群によりTEWLの上昇が有意に抑制された。全ての群において皮表角層水分量は有意差を認めなかった。今回SLSを陽性コントロールとした繰り返し・オープン試験の有効性を確認し,高分子量の界面活性剤および保湿成分の添加がSLSのシャンプーの障害を緩和することを犬においても明らかにした。我々が知る限り,本研究が犬における繰り返し・オープン試験の適合性を検討した最初の報告と思われる。