2021 年 30 巻 3 号 p. 72-75
犬の肝臓腫瘤切除術において,術中に中心静脈圧(CVP)を測定し,循環管理の指標としての有効性について調査した。2017年から2019年の間に肝臓腫瘤の治療として肝臓切除を実施した犬10頭について回顧的に調査した。ヘマトクリット値 (Hct) は麻酔後に平均値が12%減少した。術中のCVPと他の測定値との間に有意な相関関係は認められなかった。CVPにおいて測定開始時や開腹術後と比較して術創閉鎖後に有意な低下を示した症例が認められた。術前と術後の値の変化について,CVPとHctの間に有意な相関が認められた(ρ=0.8087)。今回の結果から犬の肝臓切除時において術後のCVPの低下はヘマトクリット値の低下と相関することから,術中出血による循環血液量の低下を反映することが示された。