動物臨床医学
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症例報告 :
猫の肝に発生したカルチノイド腫瘍の1例
山口 光昭浅沼 秀樹橋本 志津古川 修治弓削田 直子三枝 早苗山上 哲史山村 穂積
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2000 年 9 巻 1 号 p. 13-18

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抄録

黄疸、食欲および飲水廃絶を主訴とする9歳齢避妊雌のアメリカンショートヘア猫でX線および超音波検査を行い、肝の腫瘍を疑い、試験開腹を行った。全肝葉の辺縁に数mmから70mmの腫瘍が多結節性に認められ、病変部捺印生検のライトギムザ染色およびパパニコロウ染色、病理組織のHEおよびグリメリウス染色を行ったところ、N/C比50%以上示す細胞が、64%に認められ、細胞質は濃染性かつ辺縁不明瞭、核は複数の核小体を保有、あるいはクロマチン顆粒散在も認められた。病理組織検査の結果、腫瘍部位に血管の増生および大小の腺管形成と細胞質に乏しい不整円形細胞の索状配列がみられ、細胞質および核にグリメリウス染色陽性顆粒も認めた。このことから本腫瘍をカルチノイド腫瘍と疑い、免疫組織化学染色および電顕による検討を行った。その結果、NSE陽性反応が細胞質および核に認められ、シナプトフイジン軽度陽性反応が細胞質に認められた。また、電顕検索により細胞質内に直径200nmの二重膜構造を持つ内分泌顆粒が認められた。以上の結果からこの腫瘍は猫では発生が稀な肝カルチノイド腫瘍であることが判明した。

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© 2000 動物臨床医学会
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