日本土壌肥料学雑誌
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酸性鉱さいの溶解性と肥効に及ぼすアルミナの効果
安藤 淳平浅野 径幸
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1990 年 61 巻 1 号 p. 16-21

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抄録

CaO, Mgo, Al_2O_3, SiO_2 から成る多数のガラス質を合成して,酢酸塩緩衝液および0.5M塩酸による可溶率や水稲によるケイ酸吸収率を測定し,次のような結論を得た.1)ガラス質のO/Si比3.2以下の資料では,溶解性は主としてO/Si比によって決定される.Ca^<2+>, Mg^<2+>, Al^<3+> はほぼ同程度に溶出するが,ケイ酸の溶出率はこれより低い.2)O/Si比が3.2以上のガラス質資料ではCa^<2+>, Mg^<2+>, Al^<3+> およびケイ酸はすべて一様に溶出し,微粉砕して長時間溶解すればすべて100%可溶であり,溶解速度が溶解支配因子である.3)O/Si比3.2以上のガラス質のケイ酸の溶出率は溶解速度値Ca+0.7 Mg-0.3 Alから推定することができる.4)通常の市販鉱さいは,塩基性成分の多いガラス質から成り,アルミナが増すと水稲によるケイ酸の利用率が低下する.他方,塩基性成分が少なくシリカの多い酸性のガラス質鉱さいでは,アルミナが多いほうがケイ酸の利用率が高まる.5)前項の理由については次のように考えられる.塩基性のガラス中ではAlは4配位をとってケイ酸と連結し,ケイ酸の利用率を低下させる.酸性ガラス中ではAlは6配位をとってアルミナが塩基として利用し,ケイ酸は溶解が遅いが可溶であり,水稲に長時間に徐々に多量に吸収される.6)Al^<3+> は6配位であってもリン酸固定などの作用があると考えられ,肥料成分として適当か否かについては検討の余地がある.7)塩基性の高い鉱さいでは,アルミナが増すとケイ酸の肥効も酢酸塩基緩衝液による溶解率(SA可溶性)も低下し,SA可溶率はケイ酸の肥効と良く対応するが,酸性の鉱さいの場合は,アルミナが多いとSA可溶率(1時間溶解)が低くてもケイ酸の利用率が高く,SA可溶率はケイ酸利用率の良い指標とはならない.

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© 1990 一般社団法人日本土壌肥料学会
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