日本土壌肥料学雑誌
Online ISSN : 2424-0583
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権きゅう肥の連用に伴って土壌粒径画分へ集積する有機物とその窒素無機化
青山 正和
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1992 年 63 巻 2 号 p. 161-168

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抄録

国内3カ所の堆きゅう肥連用試験地 (東郷,赤黄色土,きゅう肥を8年間連用 ; 厨川,黒ボク土,きゅう肥を10年連用 ; 藤坂,黒ボク土,堆肥を43年連用) から採取した土壌を粒径によって分画し,画分中の全炭素量,全窒素量,30℃で4週間インキュベートした場合の無機化窒素量およびムラミン酸量を測定した.いずれの土壌でも,堆きゅう肥の連用によって全炭素と全窒素の含有率は全画分で増加したが,有機物量の相対的な増加は粗砂画分でもっとも大きく,とくにきゅう肥を多量に施用した東郷および厨川から採取した土壌で顕著であった.インキュベーションによって無機化する窒素の量は,堆きゅう肥の連用によって全画分で増大したが,堆きゅう肥を連用した土壌の窒素無機化率は 粗砂および粘土の両画分で高かった.まら,土壌からの窒素無機化に対する各画分の寄与を検討したところ,赤黄色土では粗砂画分が,黒ボク土では粘土画分が無機化窒素の供給に大きな役割を果たしていることが認められた.ムラミン酸量は,堆きゅう肥施用量が増えるにしたがって,東郷土壌と厨川土壌のすべての画分および藤坂土壌の粗砂と細砂以外の画分で増加した.さらに,黒ボク土の細砂画分以外のすべての画分について,ムラミン酸量と無機化窒素量との間に有意な相関関係が認められ,菌体細胞壁物質が堆きゅう肥を連用した土壌の無機化窒素の給源となっている可能性を示唆した.

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© 1992 一般社団法人日本土壌肥料学会
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