日本土壌肥料学雑誌
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開拓地土壌概要に基づく交換酸度y_1によるわが国黒ボク土の類型区分
三枝 正彦松山 信彦阿部 篤郎
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1992 年 63 巻 6 号 p. 646-651

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抄録
アロフェン質黒ボク土と非アロフェン質黒ボク土は多くの共通した黒ボク土的性質を示す反面,土壌酸性やリン酸の吸着母体,コンシステンシーなどの理化学性において著しく異なっており,両者を区分することは土地利用や土壌管理上きわめて重要である.そこで本報告では,交換酸度y_1を用いて開拓地土壌概要にみられる4,165地点の未耕地黒ボク土に区分するとともにその分布の因果関係について考察を行った.黒ボク土の区分はリン酸吸収係数で行い,15 g P_2O_5 kg^<-1> 以上の土壌を黒ボク土とした.またアロフェン質黒ボク土と非アロフェン質黒ボク土の区分は,交換酸度y_1で行い,6未満をアロフェン質黒ボク土,6以上を非アロフェン質黒ボク土とした.アロフェン質黒ボク土は,総地点数の52%(2,174地点)を占め,主として完新世テフラの降灰地域にみられた.また,アロフェン質黒ボク土は,母材が塩基性あるいは軽石質の火山灰降下地域,相対的に降雨量が少なく溶脱が進まない地域にとくに顕著に分布していた.これに対して,非アロフェン質黒ボク土は全体の48%(1,991地点)を占め,相対的に降雨量が多く溶脱が著しい日本海ぐぁや高標高地,母材が古い,あるいは最近の火山灰の降灰の影響の少ない地域に主として分布していた.東北地域における開拓地土壌概要試料に占める非アロフェン質黒ボク土の割合(49%)は,非晶質成分分析による同地域の黒ボク土全体に占める非アロフェン質黒ボク土の割合(55%)とほぼ同じであった.このことは,全国的にみても,全黒ボク土に占める非アロフェン質黒ボク土の割合が半分近くを占める可能性を示唆し,土壌管理上きわめて重要である.
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© 1992 一般社団法人日本土壌肥料学会
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