抄録
茶園土壌に炭酸カルシウムまたは硫酸カルシウムを施用し,土壌の硝化活性,チャの生育や新芽の成分含有率に及ぼす影響を調査した.収量はカルシウム資材無施用区でもっとも多く,炭酸カルシウム施用区では施用量の増加に従って減少した.また,硫酸カルシウム施用区は無施用区よりやや少なかったものの施用量による差はみられなかった.新芽の全窒素やアミノ酸含有率は炭酸カルシウム,硫酸カルシウム施用区とも施用量の増加に従って低くなった.硝化活性とpHは炭酸カルシウム施用量の多い土壌で高かったが,硫酸カルシウム施用の影響は小さかった.このようにカルシウム資材の施用によりチャ新芽の全窒素やアミノ酸含有率が低下し,生育も抑制されたが,その原因はpHとカルシウムに分けて考えることができる.つまりpHの上昇は,主として硝化の促進によりアンモニア態窒素の減少を招いて窒素の吸収が減少したことに起因し,多量のカルシウムの存在は,アンモニア態窒素の吸収に対して拮抗的に働き,窒素の吸収が減少したことによるものと推察された.