日本土壌肥料学雑誌
Online ISSN : 2424-0583
Print ISSN : 0029-0610
酸性沈着の影響下にある広葉樹林, 針葉樹林生態系における硫黄の分布と循環I : 乾物現存量と硫黄の分布
佐久間 敏雄冨田 充子柴田 英昭田中 夕美子
著者情報
ジャーナル フリー

1994 年 65 巻 6 号 p. 677-683

詳細
抄録
北海道大学農学部附属苫小牧地方演習林 (苫小牧市字高丘) の広葉樹林と針葉樹林において,生態系各部の乾物重と S の分布を測定し,次のことを明らかにした.1) 広葉樹林はミズナラをおもな上層木とする二次林,針葉樹林はストローブマツを主とする植林地であったが,両林とも,幹の蓄積が少なく,枝,葉の比重が大きい成熟度の低い森林であった.2) 樹木のS含有率は,葉でもっとも高く,根,枝,幹の順に低くなった.葉のS含有率は明らかに広葉樹 > 針葉樹であり,広葉樹では樹種による違いも大きかった.3) 上層木Sの集積量は広葉樹林 > 針葉樹林であったが,広葉樹林ではその約 54% が根株および根に存在したのに対し,針葉樹林のそれは約 38% で 50% 以上が枝・葉に分配されていた.4) 下層植生の地上部乾物重,S集積量は両林とも小さく,Sプールとして無視できる程度であった.5) 土壌の有機質層位,とくに針葉樹林のそれは,生きた葉よりも高いS含有率を示し,S蓄積量も植生のそれの約 60% に達した.鉱質土層のS含有率は低かったが,S蓄積量は両林とも,表層 50cm について約 600 kg S ha^<-1> と推定され生態系全体のS蓄積量の約 90% を占めた.6) 今回調査した森林生態系では,鉱質土層,O層および上層木がSの主要なプールになっていた.針葉樹林では,S循環の中継的プールとしてO層が重要な位置を占めることが予想された.
著者関連情報
© 1994 一般社団法人日本土壌肥料学会
前の記事 次の記事
feedback
Top