日本土壌肥料学雑誌
Online ISSN : 2424-0583
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形態別ケイ酸添加がイネの根組織におけるアルミニウムの障害と分布に及ぼす影響
顧 明華小山 博之原 徹夫
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1999 年 70 巻 6 号 p. 731-738

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抄録

低分子態ケイ酸として3mmol L^<-1> Siを含む低分子態ケイ酸添加区 (全量=3.2 mmol L^<-1> Si)と高分子態ケイ酸添加区 (全量=24.7 mmol L^<-1> Si)に,それぞれ0.8 mmol L^<-1>のアルミニウムを添加して,イネ(Oryza sativa L.,品種:コシヒカリ)を3 日間水耕栽培し, fluorescein diacetate-propidium iodide, neutral redおよびhematoxylin染色による顕微鏡観察および根組織内のアルミニウム分布から,アルミニウム障害に対するケイ酸の軽減効果について検討した。 1)アルミニウム傷害は最初は根の伸長域に現れ,処理24時間後にアルミニウムが表皮,皮層外側細胞に侵入し,根の伸長が著しく抑制された。ケイ酸の添加によりその障害が顕著に軽減され,処理72時間後においても根細砲の傷害はほとんど観察されなかった。高分子態ケイ酸添加の場合にはこの軽減効果が大きかった。 2)ケイ酸の添加により水耕液中モノマー態アルミニウム濃度が低下した。根と茎葉の全アルミニウム,およびアポプラスト,シンプラストアルミニウム含有率は,アルミニウム単独添加に比較して,低分子態ケイ酸を同時に添加した場合には増加し,高分子態ケイ酸を同時に添加した場合には著しく減少した。 これらのことから,ケイ酸の軽減効果の主な原因は,ケイ酸添加による水耕液中および植物体内のアルミニウムイオン形態の変化 (毒性の弱いケイ酸アルミニウムの生成など)であると考えられる。

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© 1999 一般社団法人日本土壌肥料学会
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