日本土壌肥料学雑誌
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山間地棚田水田における田面水及び土壌溶液ケイ酸の動態と水稲のケイ酸吸収
三枝 正彦小林 紀子
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2002 年 73 巻 5 号 p. 471-475

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抄録

宮城県玉造郡鳴子町の東北大学大学院附属農場内の田越し灌漑3年目の棚田水田において,田面水及び土壌溶液ケイ酸の時期的動態と水稲のケイ酸吸収を検討した.水稲生育期間を通しての田面水ケイ酸濃度の推移は,入水口では29.4〜38.6mg L^-1の範囲であったが,その後の下位水田で徐々に低下し,最下位の排水口では0.41〜14.5mg L^-1に低下した.また,水稲生育初期の5月中旬から下旬にかけては,下位水田でのケイ酸濃度はほとんど検出されなかった.しかし,水稲が繁茂する6月中旬以降では下位水田のケイ酸濃度は上昇し,低下程度が緩和された.土壌溶液のケイ酸濃度の推移は,各水田で顕著な差は見られなかったが,5月中旬から6月下旬にかけて24.7〜33.2mg L^-1に上昇し,その後著しく低下し,1.7〜3.1mg L^-1になった.また,表層からの深さ別土壌溶液のケイ酸濃度の推移から,水稲の生育に伴ってより深くの土壌溶液のケイ酸濃度が吸収されていくことが明らかとなった.穂孕み期,収穫期の水稲葉身のケイ酸濃度と水稲のケイ酸吸収量は,全体的には上位水田で高い傾向が見られたが,統計的に有意な差は認められなかった.

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© 2002 一般社団法人日本土壌肥料学会
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