日本土壌肥料学雑誌
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製造条件の異なる牛ふん堆肥の無機態リン酸組成
横田 剛伊藤 豊彰小野 剛志高橋 正樹三枝 正彦
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2003 年 74 巻 2 号 p. 133-140

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抄録

岩手県農業普及センター管内にて収集された牛ふん堆肥の無機態リン酸組成の特徴を,原料のふんの由来,堆肥化方法,堆肥化期間,副資材の種類に分けて検討した.全量分析と溶解性の違いを基にした無機態リン酸の分画を行い,リン酸可給性が高いと考えられる水抽出と0.5mol L^<-1>重炭酸ナトリウム抽出リン酸を易溶性リン酸とした。全量分析の結果,全炭素含量は肉牛ふん堆肥でやや高く,カルシウム含量は乳牛ふん堆肥で約1.5倍高く,その他の成分の平均値には差はなかった。全リン酸に占める有機態リン酸の割合は全試料の平均で11%と低かった。水抽出および易溶性無機態リン酸割合は,有意に肉牛ふん堆肥で高かった。これは,主に乳牛ふん堆肥のカルシウム含量が高く,難溶性のリン酸カルシウムの形成量が多いことが原因と考えられた。堆肥化方法が異なる場合,発酵・乾燥施設で製造された牛ふん堆肥は有意に全リン酸含量が高いものの,易溶性無機態リン酸割合は低下する傾向を示した.堆肥舎,堆肥盤で製造された牛ふん堆肥の間には差は認められなかった。堆肥化期間は牛ふん堆肥の無機態リン酸組成に影響し,6ヵ月以内のものに比べて長期間の堆積は易溶性無機態リン酸割合を減少させる傾向があった。副資材の種類も牛ふん堆肥の無機態リン酸組成に影響した。全リン酸含量は,副資材30%未満の堆肥で高い傾向がみられた.水抽出および易溶性無機態リン酸割合は,乳牛および肉牛ふん堆肥の両者において,他の副資材を用いた堆肥に比べてバーク・おがくず堆肥で低い傾向を示した。無機態リン酸組成に影響が大きい主原料を基に牛ふん堆肥を4つに区分した場合,全リン酸に対する易溶性無機態リン酸の割合は,バーク・おがくず以外の肉牛ふん堆肥>バーク・おがくず肉牛ふん堆肥=バーク・おがくず以外の乳牛ふん堆肥>バーク・おがくず乳牛ふん堆肥であり,これらの易溶性無機態リン酸割合の平均値は52〜79%と1.5倍の違いを示した。発酵・乾燥施設で堆肥化したものを除き,牛ふん堆肥の易溶性無機態リン酸割合(リン酸肥効率)を上記の区分によって推定が可能と考えられた。

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© 2003 一般社団法人日本土壌肥料学会
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