ニホンナシ(Pyrus pyrifolia Nakai, 品種'幸水'3〜6年生)をコンテナ(容量60〜80L)で土耕栽培し,異なる土壌水分が,果実肥大速度および茎径の変動に及ぼす影響を詳細に連続測定すると共に果実肥大や品質に及ぼす影響を調査した.果実の肥大に対する土壌水分の影響は果実の発育ステージによって異なり,果実の日肥大量は果実の最も肥大が盛んだ果実後期肥大期では高水分(土壌水分ポテンシャル;-4〜-1kPa)下で増加したが,それ以外の生育ステージでは低水分(土壌水分ポテンシャル;-25〜-10kPa)下の方が増加した.この結果は歪みゲージ式変位計を用い,測定した.果実の全生育期間を低水分(-25〜-10kPa)に維持した区に比べて,果実後期肥大期だけを高水分(-4〜-1kPa)に切り換えることによって,果実後期肥大期以降の果実肥大速度が上昇した.その結果,平均1果重は約22%増大し,また,果実糖度も上昇した.果実の成熟期に水分ストレス(-63〜-32kPa)を与えると,果実横径,側枝径の肥大が短時間(歪みゲージ式変位計の利用)で著しく低下した.一方,果実糖度は上昇した.また,水ストレス処理によって発育枝の無機元素含有率,特に窒素含有率は著しく低下した.歪みゲージ式変位計によって,果実横径や側枝径に対する水分状態の影響をノギスよりも高精度で連続的にモニタリングが可能であり,ニホンナシの栄養生長および果実肥大に対する水分供給状態を早期に診断し,栽培管理に活用できる可能性が示された.