日本土壌肥料学雑誌
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下水汚泥コンポスト長期連用圃場における下水汚泥由来亜鉛および銅の土壌-作物系での分配
後藤 茂子山岸 順子米山 忠克茅野 充男
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2008 年 79 巻 1 号 p. 17-26

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抄録

下水汚泥コンポストを26年間連用した試験圃場の表層土(0〜10cm)中の亜鉛,銅含有量の経年変化とこの間に土壌に持ち込まれた亜鉛の分配および下水汚泥施用停止後の下水汚泥由来亜鉛の分配を調べた.(1)モミガラコンポストやオガクズコンポスト施用によって土壌中に亜鉛の蓄積が認められたが,試験開始後10年が経過したころからは蓄積の鈍化の傾向がみられた.コンポスト中の銅含有量は土壌の銅含有量に近く,亜鉛のような明らかな土壌蓄積は認められないものの,次第に蓄積傾向がみられるようになった.(2)下水汚泥コンポストの26年間の連用によって土壌中亜鉛の下方方向の移動は20cmの深さまでみられ,耕うんの範囲内であった.20cmより下方への移動はほとんど認められなかった.銅もまた深さ20cmより下方への移動はほとんど認められなかった.(3)モミガラコンポスト区のオオムギによる亜鉛と銅の持ち出し量は,化学肥料区に比べ少なく,モミガラコンポスト区のオオムギが,0〜10cm層の土壌中からのみ亜鉛および銅を吸収したとしても,土壌中に存在した亜鉛の0.16%,銅の0.05%と,化学肥料区(0.47,0.06%)の比率よりも少なかった.持ち出し量が化学肥料区に比べて多かった乾燥汚泥区も,その比率は化学肥料区以下であった.すべての試験区のオオムギ茎葉の亜鉛および銅含有量は,生育初期に高く成長期,収穫期と明らかに低くなったことから,オオムギは土壌中に亜鉛,銅が多く存在しても,過剰な吸収・移行はしないと考えられた.同時に作物による持ち出しは小さいと推定された.(4)1989年から2003年の14年間にわたりモミガラコンポスト施用とともに土壌に持ち込まれた亜鉛の分配を検討し,耕うんによる水平移動はあるものの,ほとんどが0〜20cm層土壌に存在していると推定した.モミガラコンポスト区の作物により持ち出された年間の亜鉛量は,すべてを0〜10cm層土壌から吸収したとしてもそこに存在した量の0.4%程度と大きくはなかった.また,20cmより下方への移動は認められなかった.(5)乾燥汚泥の施用を停止し,20年以上経過した乾燥汚泥区において,1985年に0〜20cm層土壌に蓄積していた乾燥汚泥由来亜鉛の18年後(2003年)の分配を検討したところ,0〜20cm層土壌に約66%が残留し,約10%が20〜30cm層土壌に移動した.また作物による持ち出し量は,0〜20cm層土壌に存在していた乾燥汚泥由来亜鉛の約10%に相当した.20〜30cm層土壌への移動は,乾燥汚泥区の土壌pHが低下したことが影響したと考えられた.

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© 2008 一般社団法人日本土壌肥料学会
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