日本土壌肥料学雑誌
Online ISSN : 2424-0583
Print ISSN : 0029-0610
登熟期の水稲穂部への海水由来塩分付着害に対するケイ酸による減収の軽減効果
森 静香柴田 康志松田 裕之藤井 弘志
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キーワード: 海水, 塩分, 潮風害, ケイ酸, 収量
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2009 年 80 巻 4 号 p. 347-354

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抄録

登熟期の水稲穂部に塩分付着害を人為的に発生させ,海水由来塩分付着害に対するケイ酸の幼形期前後の追肥による減収の軽減効果を検討した結果は以下のとおりである.1)2005年は出穂前10日,2006年は出穂前29日のケイ酸処理により,海水散布前のケイ酸吸収量は両年次ともに対照区よりケイ酸処理区で多い傾向であった.2)海水を1株当たり5mL散布した各試験区の一穂塩分量は2005年の海水を散布した全区において1.0mg,2006年の海水を散布した対照区で1.3mg,ケイ酸処理区で1.9mgであった.海水無処理の試験区は0〜0.1mgであった.3)籾被害度は,両年次ともに海水を散布した対照区より海水を散布したケイ酸処理区で低い傾向であった.4)収量は,両年次ともに海水を散布した対照区よりケイ酸を散布したケイ酸処理区で多い傾向であった.ケイ酸処理区で粒数歩合が高いことが要因であった.5)海水を散布した対照区より,海水を散布したケイ酸処理で成熟期のケイ酸含有率が高い傾向であった.以上の結果から,海水散布条件下でのケイ酸処理により対照区に比べ,海水が付着した部位のケイ酸含有率が対照区より高くなる傾向があり防御効果が高まった.さらに,ケイ酸処理した区では粒数歩合が対照区より低下せず,ケイ酸により塩分付着害による収量低下が軽減された.

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© 2009 一般社団法人日本土壌肥料学会
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