抄録
1_M塩化カリウム抽出アルミニウム(KCl-Al)は酸性土壌の交換性Alを測定する標準的な方法として用いられている.この方法で抽出されるAlイオンは,主に永久荷電上に吸着されたAlイオンがイオン交換によって放出されたものとみなされる.しかし,非アロフェン質黒ボク土では,Al-腐植複合体がKCl-Al測定値に影響を及ぼすことが予想された.そこで,Al-腐植複合体の多い非アロフェン質黒ボク土A層のKCl-Alの内容を検討した.1)用いた14土壌試料のうち10試料のKCl-Alは永久荷電量(pH5の1m_MKCl中で発現する荷電量)を上回った.したがって,測定されたKCl-Al量を永久荷電上のAlイオンのみで説明することは困難であった.今回測定した永久荷電量には有機物の影響も認められ,KCl-Alへの腐植複合体Alの寄与が示唆された.2)既報および新規のA層土壌のデータセット(105点)において,KCl-AlとpH(KCl)との間には強い相関が認められ(r=-0.80,P<0.01),また,KCl-AlはAl_p(腐植複合体Al)とも相関があった(r=0.22,P<0.05).これらの結果は,KCl-AlがpHの強い影響を受けるとともに,腐植複合体Alの影響も示すものであり,腐植の負荷電でのH^+とAlイオンの交換反応でKCl-Alが規定されていることが示唆された.pH(KCl)が約4以上の土壌では,KCl溶液での抽出中にAl水酸化物の沈殿がおきている可能性がイオン活量積の計算から示唆された.3)このように,黒ボク土におけるKCl-Alは純粋な交換性Alを示すものではなく,1_MKCl溶液中の平衡Al濃度を測定しているものであり,その平衡は腐植複合体Alの影響を受け,抽出時のpHに大きく依存すると考えられる.