日本土壌肥料学雑誌
Online ISSN : 2424-0583
Print ISSN : 0029-0610
傾斜畑からの亜鉛の流出に及ぼす家畜ふん堆肥施用の影響
糟谷 真宏坂西 研二板橋 直阿部 薫鈴木 良地
著者情報
ジャーナル フリー

2013 年 84 巻 2 号 p. 71-79

詳細
抄録

傾斜枠圃場を用いてZnの表面流出特性およびそれに及ぼす牛ふん堆肥または豚ふん堆肥施用の影響を調査した.土壌のZnは粘土・シルトサイズの微小粒子に高濃度に分布し,堆肥施用,特に豚ふん堆肥施用によって高まった.また,堆肥施用により酸可溶性,還元性Znの割合が高まった.降雨に伴う表面流出において,溶存Zn濃度は流出水量,SS濃度に関わらず一定の範囲にあった.一方,懸濁態Znは表面流出水量の増加に伴い,SSとともに高濃度化し,土壌Znの多くが懸濁態,特に粘土・シルトサイズの微小粒子に含まれて流出した.豪雨が懸濁態Znの流出に及ぼす影響は非常に大きく,平成20年8月末豪雨時には,5時間のZn流出負荷量は,堆肥無施用区で年間負荷量の77%,豚ふん堆肥区で83%,牛ふん堆肥区で88%を占めた.堆肥施用により,表面流出水量あたりのZn流出量が高まったが,表面流出水量は減少し,Zn流出負荷量の増大は抑制された.特に,牛ふん堆肥区でその効果は大きく,Zn流出負荷量は堆肥無施用区の1/3以下と極めて少なかった.

著者関連情報
© 2013 一般社団法人日本土壌肥料学会
前の記事 次の記事
feedback
Top