日本土壌肥料学雑誌
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乾燥汚泥・竹チップ混和堆肥の熱水抽出液の特性評価と堆肥施用がダイズ(丹波黒大豆)の生育に及ぼす影響
菊川 裕幸 木田 森丸圓増 まどか稲元 友佳子岸本 賢一加藤 拓藤嶽 暢英
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2018 年 89 巻 4 号 p. 295-301

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抄録

乾燥汚泥の農地還元を促進しバイオマス利用を増加させることを目的として,地域の低利用資源である汚泥と竹の破砕物(竹チップ)を混和して堆肥化することを試みた.堆肥の熱水抽出液の特性および圃場への堆肥施用による植物生育への影響について検討した.乾燥汚泥と竹チップの混合割合を5 : 5, 7 : 3, 9 : 1にした3区の堆肥を設けた.熱水抽出液によるコマツナの発芽阻害試験おこない,同液のpH, EC, DOC, DTN, E2/E3, SUVA254について特性を調べた.加えて,作製した堆肥(50日目)を用いて地域特産品である「丹波黒大豆」の圃場栽培試験をおこなった.

作成した堆肥は2週間が経過すると臭気の原因の一部であるアンモニア濃度が低下した.熱水抽出液の特性については,pH, EC, E2/E3は日数経過によって低下傾向にありSUVA254は上昇傾向にあることから堆肥化過程における腐熟の進行が示唆された.発芽阻害試験では9 : 1区の発芽阻害が堆肥化初期において顕著であったが,腐熟の進行に従って阻害は軽減された.5 : 5堆肥区では阻害が認められず,重金属において基準値を超えるものはなかったことからも作物生育や安全性に悪影響を及ぼす可能性は極めて低いと考えられる.

圃場栽培試験では堆肥施用区において丹波黒大豆の主茎長,着莢数が1%水準で有意に増加した.収量に有意な差は認められなかったものの,9 : 1試験区で最大値を示し,少なくとも負の影響は認められなかった.

これらの結果より,乾燥汚泥と竹チップの混和堆肥は汚泥の臭気問題を軽減することで,地域資源を活用した堆肥として農業生産に利用可能であることが示唆された.

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© 2018 一般社団法人日本土壌肥料学会
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