日本土壌肥料学雑誌
Online ISSN : 2424-0583
Print ISSN : 0029-0610
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沖縄赤黄色土への石炭灰施用による酸度矯正とそれが新規有機物施用条件でのプライミング効果に及ぼす影響
安野 秀瑛杉原 創 関 真由子柴田 誠伴 琢也田中 治夫
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2022 年 93 巻 1 号 p. 12-19

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抄録

火力発電の副産物である石炭灰は,酸度矯正資材としての農業利用が期待される一方,石炭灰施用による酸度矯正効果とそれが新規有機物施用条件でのプライミング効果(PE)の関係性についての畑地土壌における定量的な知見は不足している.そこで本研究では,沖縄赤黄色土を対象にPEも考慮した石炭灰の適切な施用量を検討するために,13C標識植物残渣を用いて培養実験を行った.処理区として土壌のみのC区,植物残渣のみを加えたR区,植物残渣に加えてそれぞれ5, 10, 20%(w/w)の石炭灰を加えたR+FA5区,R+FA10区,R+FA20区を設置し,60日間の室内培養実験を行い,経時的に二酸化炭素放出量,二酸化炭素中のδ13C値及び土壌pHを測定した.培養60日間のPEに伴うSOCの分解量はR区,R+FA5区,R+FA10, R+FA20区でそれぞれ−31.8, −56.9, −43.9, 8.4 mg C kg−1となった.また,土壌pHはC区,R区,R+FA5区,R+FA10区,R+FA20区でそれぞれ4.5, 4.6, 5.0, 5.3, 5.9となった.以上より石炭灰20%(w/w)を施用した区では,土壌pHが改善される一方で,正のPEが発生し,既存のSOCの分解が促進されることが判った.一方で石炭灰5, 10%(w/w)を施用した区では,R区と同様に負のPEが発生したことから,炭素隔離を妨げないことが判った.

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© 2022 一般社団法人日本土壌肥料学会
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