抄録
第三大臼歯歯胚の存在率と前後的不正咬合や顎骨の大きさとの関連を調べることを本研究の目的とした。本学附属病院矯正科の患者のうち、初診時年齢が15歳未満で先天異常を伴わない365名を調査対象とし、パノラマX線写真と頭部X線規格写真を資料として用いた。調査対象をskeletal Class I、II、III群(以下sk Cl I 、II、III群)の3群、および上下顎骨の大きさによりANS-PNS(+)群とANS-PNS(-)群、GP/SN(+)群とGP/SN(-)群のそれぞれ2群に分け、第三大臼歯の存在率の群間比較を行った。その結果、以下の見解を得た。1.第三大臼歯の存在率はsk Cl II群、sk Cl I群、sk Cl III群の順に高かった。上顎第三大臼歯の存在率はsk Cl III群に比べsk Cl II群とsk Cl I群で高かったのに対して、下顎第三大臼歯の存在率には群間の差はなかった。2.上顎第三大臼歯の存在率はANS-PNS(-)群より(+)群で高かったのに対して、下顎では群間の差はなかった。GP/SN(+)群と(-)群とでは上下顎ともに存在率に群間の差はなかった。3.sk Cl II群にはANS-PNS(+)群とGP/SN(-)群が、sk Cl III群にはANS-PNS(-)群とGP/SN(+)群が有意に多く属していた。以上より、上顎骨の大きなものには上顎第三大臼歯が多く存在するのに対して、下顎骨の大きさと下顎第三大臼歯の存在率には関係がないことが示唆された。