抄録
近年、HBVやHCV、HIVといった感染症の院内感染が問題となっている。そのため患者や医療従事者を保護するというスタンダードプリコーションの考えに準じた対策が重要である。本研究では、アルジネート印象材を消毒液浸漬および消毒液浸漬後に水洗したときの寸法変化を調べた。消毒液浸漬試験:D群はフタラール製剤に20分、SH群は次亜塩素酸ナトリウム中に60分、W群は蒸留水中に60分浸漬した。消毒液-蒸留水浸漬試験:D-W群はフタラール製剤に5分、SH-W群は次亜塩素酸ナトリウム中に60分浸漬後、蒸留水中に30分浸漬した。試験片数は各条件につき15個、試験片の長さは投影機にて計測し寸法変化率を求めた。得られたデータはone-way ANOVA post hoc testを用いて有意差検定を行った。その結果、以下の知見を得ることができた。1. 今回使用した消毒液は、蒸留水に浸漬するよりも寸法変化へ及ぼす影響は小さい。2. 両消毒液から蒸留水浸漬したものは蒸留水浸漬後、急速に寸法変化が増大した。3. 印象採得後および消毒液浸漬後の水洗はできるだけ短時間ですませ、速やかに石膏練和泥を注入することが重要であると考えられる。