2020 年 48 巻 1 号 p. 1-8
急速拡大装置(以下RME)を用いた上顎の急速拡大は、古くから臨床に適用されてきた。近年、超弾性NiTiコイ ルスプリングが内蔵されたRMEが市販された。本研究では、超弾性NiTiコイルスプリングが内蔵されたRMEと従 来型のRME 2種、計3種類により生じるそれぞれの矯正力を比較した。RMEのアーム部分のデザインを標準化 し、万能試験機(EZ test、島津製作所)に取り付けた一対の治具で保持した。各RMEを 1/4 回転または 1/2 回転ア クチベートし、生じた矯正力を室温(25℃)下で 10 分間測定した。この過程を5回繰り返した。測定結果は、一元 配置分散分析とTukey検定を用いて比較した(p < 0.05)。すべてのRMEにおいて、アクチベート量が増加するに つれて生じる矯正力も増加した。超弾性NiTiコイルスプリングが内蔵されたRMEは従来型のRMEと比較して、約 40%~60%小さい力を発揮した。RMEによって生じる力はアクチベートに伴い増加し、各アクチベート間の矯正 力はほぼ一定である。超弾性NiTiコイルスプリングが内蔵されたRMEは、NiTiコイルスプリングの超弾性効果に よって有意に小さく持続的な矯正力を発揮することが示された。