竹中大工道具館研究紀要
Online ISSN : 2436-1453
Print ISSN : 0915-3683
わが国中世のいわゆる“木の葉型鋸”について ―出土品を参考にした形状復元と機能追及―
星野 欣也平澤 一雄渡辺 晶土屋 安見
著者情報
研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

1989 年 1 巻 p. 1-13

詳細
抄録

中世の絵巻物の中には、“木の葉型鋸”が盛んに描かれているが、その詳細は不明である。 ここでは、1980年、広島県の草戸千軒町遺跡から出土した ”木の葉型鋸„をもとに、外形・寸法と鋸歯の形状・諸角度は同じで、板厚の異なる6点の復元品を製作し、7名のパネルによる実用試験によって、鋸の適正板厚と機能について検討した。復元品の鋼材には炭素工具鋼(SK-5)を、供試材には45mm X 105mmの檜材を使用した。その結果次のことが言える。 l)縦挽きよりも横挽きに適し、引き使いだけでなく押し使いの比率も高い。縦・横共に刃渡りの中央部付近での利用効率が高い。 2 )刃先部分を大きなストロークで使用することには無理があり、特に縦挽きではその印象が強い。 3)総合的に見て、元から先までを一気に挽き通す使い方はされず、刃先部分は細かい仕事に利用された程度と考えられる。 4)板厚は、座屈防止の観点からみて、1. 1mm以下のものは実用に適さない。 5)鋸柄の大きさは、短径22mm、長径28mm、長さ200mmのものが使いやすい。

著者関連情報
© 1989 公益財団法人竹中大工道具館
次の記事
feedback
Top