2001 年 13 巻 p. 1-66
弥生・古墳時代の遺跡から出土した建築部材と鉄製道具を調査した結果、次のように要約できる。 (1) わが国の主要建築用材の中で、弥生・古墳時代に多く利用されていたのは、スギ・ヒノキ・クリなどであった。 (2) 木を材料とする建築を構成する部材は、樹種の特徴に応じて、適材適所に使われていた。 (3) 弥生・古墳時代の建築部材接合の加工技術は、縄文時代の技術を継承したものと推定される。 (4) 弥生・古墳時代において伐木、製材、部材加工の各段階で使用される道具編成は、縄文時代の編成を継承したものと考えられる。 (5) 弥生時代の鉄製斧は切断用縦斧と横斧に、古墳時代の鉄製斧は切断用縦斧・切削用縦斧・横斧に、それぞれ機能分化していたと推定される。 (6) 弥生・古墳時代の鉄製鑿は、斧身を利用した大型鑿、荒加工用の鑿、仕上切削用の鑿に機能分化していたと考えられる。 (7) 弥生・古墳時代の建築用主要道具の編成は、鉄製斧と鉄製鑿であったと推定される。