本稿では、財団法人竹中大工道具館所蔵の『香取屋工具店カタログ』 9点に掲載された道具の種類および数量の比較、昭和18年(1943)と昭和60年(1985)に調査された大工道具の標準編成の比較、手道具および電動工具の生産数の比較をとおして、手道具から電動工具への変遷について分析した。その結果、次の結論を得た。 1 手道具から電動工具への移行過程において、電動工具の開発は、企業の戦災復興を支える事業の一つであった。 2 電動工具は、戦災復興を目的とした住宅建設にも重要な役目を果たしたと推測できる。 3 効率を優先する現代社会においても手道具が存在し続ける背景には、電動工具にはない利点があるからだろう。