抄録
大工が情熱を傾けたことの一つである艶のある鉋仕上げの基礎的な資料を得ることを目的として、数台の鉋を用意して杉の辺材を対象に鉋掛けした。表面を目視観察すると同時に表面粗さを測定した。
上仕工鉋に仕立てて鉋掛けした表面は目視ではほぼ滑らかに仕上がった。注意してみると春材部に微少なケバ立ちと思われる箇所が見られた。ナイフエッジ検出器により測定した表面粗さ特性値(Rmax) は目視によるけば立ちの状況を代表している。仕上げ砥に巣板を用いて仕上げた8台の鉋刃先の粗さと測定した春材部の表面粗さ(Rmax) の間には相関が見られなかった。鉋の特性のうち、鉋刃の仕込勾配がケバ立ちに影響している傾向が見られた。
鉋には表面を平滑に仕上げる機能と同時に、平に仕上げる機能が持続できることが求められている。同一材料を繰り返して鉋削りした結果、延べ15m位の鉋削り長さでは良否は区別できないが、30m位で鉋によって仕上げ表面のRmaxに差がでた。