抄録
中国の鉋は日本の鉋の母体と考えられている。日本の鉋との関係を把握するため、歴史的には古辞書などに現われる ⌈ 鉋 ⌋ 字を調べた。また、形や機能といった点で中国各地で観察した各種鉋の実物資料を機能別に分類し、形や構造を調べた。
中国では7世紀の辞書に ⌈ 鉋 ⌋ 字がみられる。前後の関連資料から、13世紀頃までの辞書に見られる ⌈ 鉋 ⌋ 字に相当する道具は、木の台に十数枚の鉄刃を埋め込んだ形で、鎌のように使用したと推察した。13世紀の辞書で ⌈ 鉋 ⌋ 字の意味が二つにわかれている点から、現在の鉋に近い物がこの頃に派生したと推察した。
また、日本でも、9世紀頃の辞書に ⌈ コスリ ⌋ と呼ぶ ⌈ 鉋 ⌋ 字が存在することから、同様の道具が存在したと推察した。
現在の中国の鉋は、機能的な分類で見ると、日本とほぼ同じ種類が揃っている。また、構造的には、鉋台に水平な取っ手をつけている点、鉋身の固定方法が日本と異なる。鉋身の固定方法に着目して、鉋台の変化を推察し、初期の段階の形が日本の鉋台に関係すると推察した。