2018 年 336 巻 p. 119-
本稿では、道徳の授業において用いられる教材、とりわけ読み物教材が資質・能力を育んでいく教材になりえているのかについて検討し、これからの道徳授業においてどのような教材が必要となってくるのか示すことを目的とした。この検討にあたり、まず道徳の授業における教育内容と教材の関係、すなわち「教材を教える」のか「教材で教える」のかについて概観した。次いで、道徳の授業において定番となっている読み物教材を取り上げ、それらの多くは具体的な望ましい姿が描かれ、明示的にも暗黙的にもそれを児童生徒に伝達していることから、そのような読み物教材を「価値伝達型読み物教材」とした。価値伝達型教材は教授主義に基づいており、それに代わるものとして認知主義、状況主義などを取り上げ、それらに基づく教材の可能性を示した。最終的に、資質・能力を育んでいく道徳の教材「資質・能力育成型教材」について考察を加えた。